秘密の楽園〜14
『すべての動物達の魂の王セレンと霊獣達よ。
この場所が、あなた達の新たな聖域となります。
今ここに"父"からの祝福あれ! 』
神聖なる目映い光がウリエルの体を包んだかとおも
うと、大きく広げた彼女の翼から凄まじいほどの光
の渦が湧き上がった。
それは遥か彼方まで届きそうな勢いで広がり、「秘
密の楽園」全体を覆い尽くす程だった。
余りの激しい光に、アスタロトは慌てて両腕で顔を
覆ってしまった。
やがて凄まじき光が治まると、目の前にはセレンと
霊獣達の姿が神の光をまとい現れたのだ。
その光景は壮大で、地獄管理界の長官であるアスタ
ロトでさえ圧倒されてしまう程だった。
(ウリちゃん……これだけの数の霊獣達とセレンを移
動させちまう力って……どんだけなんだよ! )
改めて高位級の大天使であるウリエルの力に、彼は
決して彼女には楯つくまいと誓った。
目映い雪の世界のような光から現れた、霊獣達の王
セレン。
アスタロトも初めて見るセレンの姿は、ウリエルの
生徒達の前とは違い、白銀の輝きに覆われたドラゴ
ンの姿であった。
柔らかな白い毛が聖域の風になびかせ、美しき真珠
の瞳でアスタロトを優しく見つめていた。
クリスタルの2本の角は、緩やかに螺旋を描いてい
る。その角には真珠のような雫が付いているのか、
キラキラと美しい。
静かに佇むその姿は神々しい聖獣であり、とても
"あの"地獄獣アルカノと同一だったとは、誰が想像
出来ただろう。
無数の霊獣達を従えた"彼"は、正しく聖霊獣の王に
相応しかった。
セレンはゆっくりと滑るようにアスタロトに近寄る
と、頭を優雅に垂れた。
『初めまして、アスタロト殿───。
わたしはセレン、この者達を守る者です』
セレンは紹介するように、背後の霊獣達を振り返っ
た。
「ああ、セレン。初めまして! 」
『あなたはウリエル殿の夫であり、地獄管理界の
方。もう片方のわたし、アルカノが棲まう域の方』
セレンは"もうひとりの自分"に思いを伝えるかのよう
に、胸に埋め込まれたアルカノの爪の手彫り針に手
を当てた。
永遠に切り離されてしまった、セレンとアルカノ。
その切なさにアスタロトは、胸を締め付けられる思
いだった。