アルカノとセレン〜9
「あらあら…… 今度はリア達なの?」
ウリエルはちょっと呆れ、「早くお部屋に戻りなさ
い!」とでも言うように、腰に手を当てちょっぴり
睨む真似をした。
「どうしたのですか?あなた達。早く帰りなさい」
「ごめんなさい、ダニエル達が気になって。あの、
何かあったのですか?」
「いえ、何でもないのよ。だから─── 」
「僕達、(王様に)直接謝りに行こうと思ったんだ」
(はあ〜…… 。時として純粋過ぎる事は邪魔になるも
のね)
呆れため息を吐きつつも、ウリエルは少女天使達に
簡単に説明した。
「そういう事です。さあ、もう帰りなさい。帰って
今日習った事を復習しなさい」
だが、リア達はなかなか帰らず、三人とも目配せし
ている。
「あの…… ウリエル様。私達…… ですね…… 」
「天界図書館で調べてみたんです!楽園の事」
ルルのもどかしい言い方に、リアは遮るように先を
急ぐ。
「ほらダニエル、あなた達も聞いたでしょ?ルルが
言った言葉。ね?ルル、言ったよね?」
「え…… と…… 」
「ちょっと待ちなさいよ、リア。本人に話しさせな
いと」
急かすリアに気後れしてしまったルルを可哀想に思
ってか、ロジータがピシャリと言った。
「ルル、ウリエル様にちゃんと伝えましょ」
「うん…… 。ダニエルに言った言葉だけど─── 」
『王に一度目をつけられると、決して逃れる事は
出来ない』
「私、覚えてないの…… 。リアに指摘されるまで何
であんな事言ったのか、自分でもわからなくて。
それで怖くなっちゃって…… 」
「だからウリエル様に伝えようと思ったんです、私
達。でも、その前に自分達で調べてみようっていう
事になって…… 」
「天界図書館で楽園に関係する事、色々調べてみた
んです。でもそんな言葉なんて、どの本にも何処の
ページにも載ってなくて。ウリエル様、これってや
っぱりセレンからの警告なんでしょうか?」
そう言った後リアは、身と翼をブルッと震わせると、
両手を握りしめた。
「やっぱり僕行かなきゃ…… 」
見ると、ダニエルが青い顔をしている。
「大丈夫ですから。森の王が直接あなた達に危害を
加える事はありません!恐らく、まだ未熟なあなた
達を脅しただけでしょう。先程も言ったように、私
が彼と話しをします。いいですね」
ウリエルは、生徒達一人一人に言い聞かせた。
(これ以上、この子達を不安にさせてはいけないわ)
「森の王の心配は、自分の守るべき聖域が今危機に
あるという事なのです。授業の前にも言ったけど、
老天使長様は以前からあの森については考えていた
ようなの。決して、あなた達の行動から引き起こさ
れたわけじゃないのよ。だからダニエル、もう自分
を責めないで。いいわね?」
「はい、ウリエル様…… 」
「大丈夫だよ」とでも言うように、リコとマーシュ
は大切な親友をギュッと抱きしめた。
リアとルル、ロジータもそれに続く。
この子達の翼に光あれ─── 。
ウリエルは母なる太陽の如く、暖かい眼差しを生徒
達に送っていた。