看取りの際に、家族が何をしていいのかわからないでいるときは、患者さんに触れてもらうことをお勧めしています。
なぜかというと、物理的な距離イコール心の距離だからです。
例えば、あなたはあまり知らない人が近くに来ると、後ろに下がってある程度の距離を保とうとしませんか?
なぜ下がるのかというと、それは相手との距離にストレスを感じるからです。
つまり相手との物理的な距離とはイコール相手との心の距離なのです。
物理的な距離が心の距離とイコールならば、物理的な距離を無理なく縮めれば、お互いの心の距離も一気に近くなります。
いかに家族といえども、病院に入院していることで、母親、父親、子供などの役割とともに病人という思いが強くなることがあります。
すると家で接していたような関係性が崩れ、心の距離が生まれてしまいます。
何を言ったらいいか、どうしたらいいかわからなくなります。
相手のことも分からなくなります。
ですから、まず心の距離を縮めるために、物理的距離を縮めます。
とくに病院はベッドで柵がしてあることが多く、ベッド柵が心の垣根になっていることがあります。
このベッド柵を取り払い、心の垣根を取っ払うと、家族は自然と手を握ったり、身体をさすったりするようになります。
患者さんともっともっとそばにいたいと思っているのは家族です。
心の距離が縮まれば、本音も言いやすくなることでしょう。