ここに報告がある。
じつは、今年の前半にはまだ、例の事件の証拠となる俺のSSがひとつ残っていたのだ。
それは某メーカーに勝手にソーシャルゲームとして商業ベース化されたシリーズもののコミカライズの原作と言えるものだ。
目を通さば、決定的とは言わずとも、間接的な証拠とはなる。
なぜなら商業化された漫画はパクリってレベルではなく、俺の書いた文章そのままだからだ。
それが最近ググってみたら消されていた。
ちょっと前までタイトルを入れれば検索エンジンの一番上にそのSSが出てきたのに今はもうどこにも見当たらない。
以前のように、消したのは正義感に燃えた一般人、などとはもう、思わない。
むろん。消したのは事件の関係者であろう。
消されたのは、こないだ俺がパクられSSリストを限定記事としてネット上に公開したすぐ後だ。
数年前フラクタルが突撃してきた時、証拠を消されまいと最初に書いたのをコピペしといたもののひとつだ。
最初に書いたオリジナルの方は俺の大量のSSと共に消されていた。
それは元来、無銘の掲示板に連載したものだった。
掲示板というものの特徴として、掲示板に書かれたものにはタイムスタンプがいちいち掲載されている。
それを見ればわかった事だが、俺が最初にSSを書いてた頃の日時が書かれていた。
無論タイムスタンプはコミカライズされるよりもずっと前だ。
恐らく犯人は、俺がこないだ書いた限定公開の記事において、まだネット上に証拠を残ってるみたいなニュアンスで書いた記事をみて一応確認してはみたのだろう。
SSの内容とタイムスタンプを発見した犯人は、さぞ慌てたに違いない。
その漫画じたいが俺の書いた文書をまんま流用したものなので当たり前なのだが、内容は漫画そのままで、コピペといっても過言ではない。
しかし現在その漫画を毎週読んでいるリアルタイムの読者からしてみれば、作者が毎週四苦八苦しながら更新してる筈の漫画そのままの文章が十年以上前にすでに何十話も書かれていた事に対し、多少の不自然さを感じたはずだ。
それが最近、消されたのだ。
実際どうやって消されたのかまでは、はっきしいってわからない。
だが、想像はできる。
掲示板の運営会社にクレームを付けて消すよう迫ったのか?
あるいは、その掲示板じたい犯人の運営する会社のサーバーだったのか?
何であれ、証拠隠滅をした犯人はさぞ安心したに違いない。
目の上のたん瘤である証拠が綺麗さっぱり消え、ひと安心……と思い込んでいるのだろう。
確かに、ネット民にすぐに示せるような証拠はなくなった……だが。
だが、残念。それは逆なんだな。
ネット上では、完全&完璧に証拠を揉み消す事なぞできない、という原則がある。
犯人は余計な事をしたばかりに、逆に証拠を増やしてしまったのだ。
犯人は個人かもしれないし、会社ぐるみかもしれない。
会社ぐるみであるとしたらそれは組織犯罪という事にもなろう。
とまれ、俺が訴えようと思えばいつでも訴えられる。
そこに気付いた時、じつに気分が楽になった。