僕がオートバイレースをやっていた頃の話

 

6歳の頃から10年間 家族一丸となって“モータースポーツ”というものに取り組んでいた

 

10年間365日 生活の全てを費やしていたし 小学校から高校まで 休日はろくに友達と遊んだ事が無かった 公園で野球をした事が無かった

本当にレースしかしてこなかった

 

レースは レースの才能は無い方では無かった と思う

 

 

 

“明智ヒルトップサーキット”という

岐阜県の山奥にある小さなコースから始まったレース人生

周囲のサポートもあり本格的に活動していたし

公式の場でも何度か表彰して頂いた

 

 

高校の時には ヘルメットメーカーやオイルメーカーのスポンサードも頂いたり

父の夢でもあった「レーサー」を受け継ぐ形で 自分の人生の全てを費やしてきた

 

でも 僕はレースを辞めた

 

「大学受験とのタイミング」

「家庭の経済的に続けられなくなった」

「日本ではメジャーなスポーツではない」「食べていけるのは一握り」「仕事には出来ない」当時の僕は色んな理由を並べ立てた

 

でも本当は並べただけ ただ自分を正当化しようとしただけ

これ以上 頑張れなくなった自分を納得させようとしただけ

 

お金が無いならもっと頭を下げれば良かったし

時間が無いならもっと賢く過ごせば良かったし

ダラダラ続ける事も出来たかもしれないけど

当時の 自分なりの“本気”で取り組む事を生きがいと感じていた

 

辞める時 家族は何も言わなかったし

お前が決めた事なのだから と受け入れてくれた

 

突然だが僕は今 ロックバンドという形で音楽をやっている 歌をうたっている

あの頃のレースのように いやそれ以上に本気だ

 

でもある時ふと Facebookなんかで繋がっている昔のレース仲間 幼少の頃からサーキットで何度も競い合った友達 彼らがオートバイの全国誌に特集されていたり 全日本選手権で活躍していたり 華々しい知らせを見聞きする度 本屋の雑誌コーナーでページを捲る度 正直凄く悔しくなったりする

 

「あの頃絶対僕のが速かった」

「彼より僕の方が才能あった」

笑えるけどそんな事ばっか脳裏に浮かんだ

「チャンスが来れば」「タイミングが来れば」とずっと考えていた

“いつか来る”その時がくれば僕も...って本気で信じていた

自分はどうにかなると思っていた

 

でも

今となってはそんなの全く意味無くて

 

“いつか来る”その時なんて 待ってるだけじゃ来る訳なくて

現状 彼らは険しい世界を駆け上がっていて

僕は結局 何者にもなれずにいた
 

辞めてようやく気付いた 気付けた

どんな形でも 泥臭く“続ける”事

それが何よりも大事だったんだって事

 

本当に痛いほど実感させられた

才能の有無 知識 経験 そんなものより

とにかく諦めずに続ける事が一番尊い

 

きっと今 僕が“何も”やっていなかったら

会う人会う人見境無く

昔の華々しい自分を見せびらかしていたかもしれない

「レースやっててさあ」

「結構凄かったんだよ」

「全国大会とかも優勝したり」って

きっとめっちゃダサい事してた そんな気がする

 

でも幸い、

まだ何者にもなれてないけど 何もやってない訳じゃないって

 

彼らの記事を「知り合いなんだよコレ」って

他人の栄光を自分の事のように自慢する奴にはなりたくないから

僕はまだ 闘う人間でいたいから

 

今の僕にはバンドがあって メンバーがいて

応援してくれる ファンの方や皆さんがいて

未だ見守ってくれている 家族や友人がいる

 

一度 僕の人生は挫折した

なんで辞めたんだろ って後悔に苛まれまくった

でも 一度きりの人生で またもう一度

「本気で向き合えるもの」を掴めたのなら

今度こそは 何があっても絶対続けよう

選ぶタイミングが来ても 必ず続けよう

後ろ指差されても バカみたく続けよう

心からそう思ったし そう思ってる

もう一度 心からやりたい事をやれているのは

きっと当たり前な事ではないから

 

読んでくれてるあなたに だからとにかくお前も頑張れよ! なんて事を言いたい訳じゃない

これはあくまで僕の話 僕が僕をしつこく続けている理由

あなたに押し付けるつもりは無い でも

もし 今あなたが何かを続けていて

意味や将来性を感じられず手放したくなったり

ただ何となく面倒臭くなって辞めたくなったり

周囲の心無いような言葉で諦めそうになったり

そうなったら、

一度休んでも良い 腰掛けても良い

 

でも絶対 絶対に続けてみて欲しい

 

どうしても辞めなくちゃいけない理由とかあるのなら仕方ない

けど “少し頑張れば続けられる” のだとしたら

きっとそれはもう 上手く言葉に出来ないけど

それは“才能”をも凌駕する“才能” だと僕は思う

 

ピアノのレッスンを続ける でも 毎日学校に休まず行く でも 毎朝ネコに餌をやる でも もはや本当に何でも良い

続けるだけで それだけで本当に凄いと思うから

やってる事が凄かろうがしょぼかろうが全然良いじゃんって

 

続けていれば 必ず何かあるから

 

だから ちゃんと今日も今日を続けて下さい

憂鬱な月曜日が憂鬱なままでも良い

無理にハッピーにしなくたって良い

でも また来週も一緒に迎えよう 一緒に中指立てながらファッキンマンデーしよう

 

どんなあなただろうが

自分の不甲斐無さに泣いていようが

今日も何だかんだ通勤通学してる 生きてる

そんなあなたにはちゃんと

人生の“才能”があるって信じてる

 

今日も全力で歌う 自分の言葉を証明する為に 

そして救えるように あなたと あの日の僕に

そんな誓いを込めたうたを

 

 

もうこんな時間 またゆっくり話そうね

気を付けて行ってらっしゃい