★★☆☆☆

 

山本直樹原作、城定秀夫監督『ビリーバーズ』を観てきた。劇中の新興宗教はオウムというより、白装束のパナウェーブ研究所っぽいが、描き方が(予算的なスケールも含めて)ちょっとしょぼい。カルトを描くという点では『ミッドサマー』は徹底したリアリズムで作られており、やっぱりすごい。

 

奇しくも統一教会問題や安倍元首相の銃撃事件で、タイムリーな内容になっているが、当然撮影はもっと前だし、原作は1999年である。この新興宗教の修行者たちの内部は取材によるものなのか、全くの想像なのかが気になる。

 

新興宗教にハマる人については、以前、森達也の『A』を観てよく理解できた。俗世での生きづらさを抱えた人にとっては宗教の世界は唯一の生きる場所であり、自分もそれを求める可能性があると感じた。

 

修行者たちは信者に生かされて、労働や俗世間から解放される代わりに、信者のために修行を行う。自分も生きるのが嫌になり、自殺することもできないなら、たとえ厳しい戒律があったとしても、俗世から離れて聖職者のように暮らせるなら、それを選ぶ可能性はある。この世の辛さに比べたら修行者の辛さは決して“理不尽”ではない。

 

主人公たちは離島で暮らしているが食料は毎日船で運ばれてくる。自給自足の実験台ならば、なぜ農業をやらないのかがちょっと疑問。あと、3人のために、結構な人数で船を出すのは経済的ではないが、それほど彼らは上位の信者ということだろうか。

 

副議長とオペレーターは恋仲になるのだが、途中でお互い名前を知らないことが分かる。このシーンはハッとした。やはり本当の名前を奪われるということは恐ろしいこと。千と千尋を例に出すまでもなく。

 

それにしても、もう少しお金をかければなあ、という感じ。こういう映画は園子温が好きそうだが(『愛のむきだし』とか)、ちょっと毛色が違うし、最近は#metooを食らってるし、ダメだろう。山本直樹の代表作『レッド』は連合赤軍の話だから、この話も宗教というよりはもっと広いカルトだとか、密室空間で人間が狂っていく様を描こうとしているのだろう(未読なので想像)。

 

連合赤軍とエロというと、若松孝二が思い浮かぶが、彼が存命ならこの映画を撮っただろうか?(原作発表時は存命)

 

最近、評価の高まりが著しい城定監督だが、『猫は逃げた』はよかったが、あれは今泉力哉の脚本の力が大きいと感じた。逆に城定脚本、今泉力哉監督の『愛なのに』は完全に今泉力哉の作品という感じがするから不思議だ。『アルプススタンドのほしの方』は原作モノだが、いまいちハマらず。

 

もしかすると私は、城定作品との相性が良くないのかもしれない。