★★☆☆☆

 

森見登美彦原作のアニメーション映画『ペンギン・ハイウェイ』を観に行った。

森見作品は好きで、『ペンギン・ハイウェイ』までの作品はすべて読んでいるのだが、最近はすっかり小説を読むことが少なくなったこともあり、熱心な読者とはいえなくなってしまった。

しかし、私にとって、読んだことのある作品が映像化されることは稀なので、せっかくの機会にと観に行くことにした。

 

森見ファンの私であるが、実は映像化作品はほとんど観ていない。

評価の高い『四畳半神話体系』も少し観ただけでやめてしまった。

彼の作品の面白さは、その語り口にあると思っているので、映像にしてしまうとその面白さがそがれてしまう。同様の理由で『夜は短し歩けよ乙女』も『有頂天家族』も観ていない。

 

一方で、『四畳半神話体系』、『夜は短し歩けよ乙女』に続いて、今作の脚本を務める上田誠は、こっちはこっちでファンなのである。

なにしろ彼は、傑作『サマータイムマシーン・ブルース』の原作者であり、私が好きな劇団、ヨーロッパ企画の主催者でもある。(『サマータイムマシーン・ブルース』同様、彼の原作で、本広克行が監督を務めた『曲がれ!スプーン』は微妙)

 

なので、森見登美彦原作、上田誠脚本なんて、私にとっては夢のような組み合わせであるはずなのに、実際はそう上手くはいかないのである。

加えて、今作『ペンギン・ハイウェイ』の原作に対する私の評価は、イマイチであった。設定と雰囲気は良いのだけれど・・・というのが感想で、話の筋もほとんど忘れてしまっていた。

 

平日のレイトショー(22時台)で、しかも地方都市のシネコンなのだが、意外にも10人近い観客がいた。アニメ好きそうな男子大学生2人組とサラリーマンカップル、なぜか中年の夫婦もいた。

 

私は、アニメはほとんど観ないので、映像表現のことに関しては、なにも言えないが、全体的には原作同様、可もなく不可もなくといったところで、悪くはないが、途中少し退屈した。

しかし、これは原作の問題点で、物語の求心力が弱い点に原因がある。

SFとはいうものの、実質はファンタジーで、科学的なプロットがあるわけではなく、あくまでも語り口と雰囲気を持ち味に物語は進む。(今までの森見作品が大学生を主人公に書いていたものを、そのまま小学生に置き換えたというのが、この作品の着想だろう)

 

見た目はジュブナイル小説なのだが、あくまでも大人向けに書かれているため、本物のジュブナイル小説のような子どもを引きつける面白さはない。というのが私の厳しめの原作評だ。(『ソラリス』が下敷きになっていることは、初めて知った)

 

これは、映画にも言えることで、子どもを主人公にしたアニメではあるが、あくまでも観客は大人を対象としており、子ども向けには作られていない。

これは日本のアニメ映画全般に言えることではあるが、あくまでも子どもが楽しめることを前提に、大人の鑑賞にも耐えうる作品を作るというのは非常に難しいことだ。

そう考えると宮崎駿はつくづく偉大だったと言わざるを得ない。(最近では、細田守がそうなろうとしている)

 

基本的には、物語は原作通りだと思われるが、映画になったことで、わかりやすくなった点もある。(私が原作を忘れていただけのことかもしれない)

 

ひとつは、物語の重要なモチーフとなっている“海”についてだ。

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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