リリー・フランキーがラジオで宣伝しており、前作の『PLAN75』を映画好きの友達が薦めていたこともあり、今のうちに観ておこうという、いつものやつだ。
話はそれるが、前にピンク映画の重鎮・浜野佐知のWikipediaを読んでいたら『日本の長編劇映画の監督で、最多本数は田中絹代の6本である』という1997年当時の発言が記載されており、(浜野はそれに奮起して一般映画を撮り始めたのだが)、直感的に「そんなばかな」と調べてみたら、どうやらその通りらしく、確かに女性監督で思いつくのは、河瀬直美や西川美和、荻上直子も蜷川実花もみな2000年以降の監督だ。
※ちょうどこれを書いていたところ、浜野を検索したら、高橋源一郎のNHKラジオ『飛ぶ教室』にゲスト出演しており、驚いた。
しかもミニシアター系の監督たちなので、メジャーな女性映画監督は全然いない。というか海外だってそうだ。いかに映画界が男性社会かということだ。
閑話休題。タイトルの『ルノワール』は、主人公のフキが父親(リリー・フランキー)の入院している病院のロビーで買った(買ってもらった?)ルノワールの絵から。
ポスターに使われているシーンは、終盤、豪華客船の上でダンスをするシーンだが、これは彼女の空想の世界。
以下、ネタバレあり。
冒頭は、泣いているアフリカの子どもたちの映像から始まる。これは後ほど出てくる河合優実の夫が見ていたビデオだろう。
ベッドで首を絞められるフキ。彼女のお葬式。それを見ているフキ。泣いている同級生たち。
「泣くのは、自分が悲しいから?それとも死んだ人が可哀想だから?」というフキのナレーション。実は作文の発表会で、自分の死を題材にした作文を読んでいた。
前は「みなしごになってみたい」という作文を書いていたと保護者面談で、母親(石田ひかり)は先生に心配される。
父親であるリリー・フランキーは病気で入院している。そのストレスもあってか、石田ひかりは、部下に厳しく当たり、パワハラを告発されてしまう。
その結果、研修に送り込まれるのだが、そこで講師の中島歩と出会い、恋仲になってしまう。
中島の妻は健康食品を扱う会社をやっており、そこから石田はガンに効く薬を買う。
一方、リリー・フランキーは病院の掃除のおばちゃんから勧められて、中国の気功術のような教室に100万円払って通うことになる。
フキは、ユリゲラー風の超能力者をテレビで観て、超能力にハマる。
母親の恋に気づいたフキは、中島歩と別れるようにと赤い糸を寝ている母の指に結びつけて、ハサミで切る。結果、中島の妻が家に押しかけ、中島が不倫の常習犯だと暴露。二人は別れるので、フキのおまじないは叶ったことになる。
また、フキは英語塾で知り合った友達と空襲の記録映像を観に行くが、友達はショックを受けて倒れてしまう。
その後、フキは彼女の家に遊びに行くが、化粧棚の箱に彼女の父親の浮気の証拠写真(彼女の母親が探偵事務所に撮らせたもの)が入っているのを見つけてしまう。
フキは友達と金属探知機で宝探しゲームをするが、フキは宝を浮気の証拠写真が入った箱に入れてしまう。そして、友達はそれを見つけてしまう。
その後の展開は描かれていないが、おそらく大事になり、しばらくして、彼女は青森の母親の実家に引っ越すことになったと英語塾を辞めてしまう。
フキの超能力熱は冷めることなく、今度は自宅のマンションの上の階から下を見下ろしていた河合優実に声をかけて、彼女の家で彼女に催眠術をかける。
「暗い部屋にいて窓がひとつあります。そこには誰がいますか?」という問いかけに河合は「まこちゃん」と答える。
まこちゃんとは死んだ彼女の夫だ。
夫はペドフェリアで、子どもの泣き顔を収めたビデオを隠し持っていた。それを見つけてしまい、彼を気持ち悪いと思ってしまった河合。喧嘩になり、翌日、夫は鍵を忘れて家を出てしまう。それを見つけて、夫を困らせようと、河合は知らせずに鍵をかけて家を出る。
人身事故で電車が止まっていたので(初めはこれがまこちゃんかと思った)、映画を観て家に帰るとマンションにはパトカーや救急車が停まっている。11階のベランダから人が落ちて死んだらしい。
彼女の家ではベランダの戸は鍵をかけていなかった。だから、鍵を忘れた夫はベランダから部屋に入ろうとして転落したのだ。
そこまで話したところで、フキは顔の前で大きく手を叩き、「終わりです」と言う。なんというタイミング。決してフキは気まずさを感じて終わらせたわけではない。河合が一人語りをしている最中も、フキは部屋の中を歩き回り、引き出しを開けて中を見たり、集中力がない。
(しかし、こんな事件があったらフキもさすがに気づくのでは?事件後に引っ越したのか?それにしては2人で住んでいたかのような部屋だったが)
それはさておき、河合の一人語りには引き込まれる。再現映像が写されるわけではなく、完全に彼女のモノローグのみなのに、ここまで引き込まれるのは、彼女の声の魅力なのか、表情か、演技力か。顔も魅力的だ。
フキは、伝言ダイヤルで知り合った浪人生(坂東龍汰)の家に連れ込まれるが、浪人生の母が予定より1週間早く海外から帰ってきたため、フキは風呂の浴槽に隠されて、逃がされる。坂東龍汰はイケメン。
リリー・フランキーは、一度、病院から家に戻ってくるが、母の部屋に喪服がかけられていることにショックを受ける。それを見てフキは部屋の電気を消す。そして、その後、喪服を台所のゴミ箱に捨てる。
フキは、父と競馬場に行くが、嫌な若者たちに(多分)財布をすられて、タクシーで帰宅する(あの距離で2,500円は安くないか?と思ったが、今と初乗り運賃が違うからか)
電車の中で、フキは母と両手を合わせて念力を送る。1枚目のトランプは外れるが、2枚目は母が「ハートのクイーン」と言うとフキはニヤリと笑ってエンディング。「ハートのクイーン」というのが象徴的だ。
岐阜が舞台なのか、笠松競馬や鵜飼のシーンが出てくる。相米慎二の『お引越し』を思い浮かべた。
父と河原を歩いているが、同級生が来るとわざと父から離れて他人の振りするシーンが悲しくも微笑ましい。