合わない人間や冷やかしの人間を排除するためか、はたまた興味を持った人間を逃さず釣り上げるためか。
塾がばら撒く広告に興味を持ったことを表してしまった人間にはまずスカイプ会話を持ちかけ、入塾後も何かとスカイプで講義を行い、塾生同士もスカイプで連絡を取らせる。
月収200万を夢見て入ったばかりのZyYは、FBを使って"友達の輪"を広げることに腐心していた。
あんなにも、見ず知らずの人間から来る友達申請を嫌い、全て拒否してきた人間とは思えない変わりっぷりだ。
そんなZyYに塾幹部の1人が接触してきた。「入ったばかりで右も左も分からなくて~」とZyYがてへぺろしながらメッセージを返すと、「スカイプしましょう!」と幹部が持ちかけてきた。
一瞬ZyYは思案顔になる。この頃はまだスカイプ慣れしていなくて、面識のない人間と音声だけでも会話をするのも、ZyYにはハードルが高かった。
だが、今は収入に繋がるすべてを引き寄せる上昇気流に乗っている!と思った(と後で本人が振り返った)ZyYは、幹部に「よろしくお願いします!」と返信を打つ。幾つかの候補日時が出され、ではよろしく、と2人のやり取りが終わる。
おい、月収の額ははるかに及ばないだろうが、その女性幹部よりZyYの方が年季が入っていることを申告しなくていいのか?
「アフィリエイトを始めてどれくらいですか?」
「10年以上ですね~」
「…」
とっかかりの会話から女性幹部がムッとするのが、今から目に見えるようだ。
「初心に戻るの。私は初心者」
念仏にように唱えるZyYに私の声は届いていない。。。。
「この日は20時から幹部とスカイプ」
ZyY愛用の手帳に赤で予定が追加される。
「生暖かく見守るのだ」
と私は唱えた。
ピコーン
ああまた、お友達承認のお知らせか?
「あ……れ?」
予想に反して、訝しげな声があがる。気になって目をやると、戸惑いから半眼の冷めた眼差しに移行中のZyYが見えた。
「ZyYさんは塾生だったんですね。スカイプは中止します」
そっとZyYの肩越しに覗いた画面には「お前なんぞお呼びでない」というメッセージが表示されていた。
あまりにも分かりやすくて失笑が漏れそうになる。だが、ネガティヴワードはNG。ジト目を向けてくるZyYの肩をポンポンと叩くだけにとどめる。
この後しばらくしてから明らかになったことだが、ZyYが入ったこの塾は、初級を抜けるとスカイプで新規勧誘をする許可が与えられ、1人勧誘が成功するごとに◯万の報酬が発生する仕組みになっている。
つまり、この女性幹部は自分の稼ぎに直結するご新規が欲しかったのだ。既に入塾済みの人間とのスカイプなど時間のムダ。
カネにならないメンバーになど意味がない。
「そりゃそうだよねー。それが営業だよねー」
ZyYは努めて平静を装っている。
ZyYが最も嫌う、いやZyYに限らず少なくない数の人が多少の嫌悪感を抱くだろうこの女性幹部の営業。
キミが目指しているのはコレなのか?
コレが、キミが夢見る月収200万か?
投げかけられない言葉を、私はコーラに溶かして飲み込んだ。
