失恋は…
できることならもう2度としたくない(笑。
だけど、
傷ついたおかげで得られたこともある。
大したことではないかもしれないけれど、名曲と呼ばれる歌たちの芸術性を理解できるようになったことは、私にとっては失恋の立派な副産物だ。
この世界には美しくて切なくて哀愁に満ちた歌がたくさんあって、それらには傷ついた心を癒す力が備わっているのだと、理解できるようになった。特に私が生まれる前の時代の"むかしの歌"に心掴まれる。時代は違えど、人々が感じてきた喜びや悲しみは、昔も今も何ひとつ変わらない。昔のひともみんな傷ついたり悲しんだりしながらも、それらを乗り越えて生きてきたのだとしみじみ感じる。だから、わたしの失恋なんかは大したことないのだ。いつかは癒えるし、いつかは乗り越えられる。そして、いつかまた素晴らしい人に出会えるのだと期待し、心の片隅でほっとする。
失恋という名の"芸術"に、わたしはいま全身で浸っているのかもしれない。ある意味で"今"は、とても貴重で尊い…はず(笑。
この貴重な日々のおかげで感受性が豊かになってきた気もしている…(笑。
文章を書くのは苦手なのだけど、ふと、失恋直後に書いていた日記に目を通すと、我ながら、うまく書けているな、と感心することがある(笑。仕事や課題で文章を起こすのは大仕事だと感じるのに、失恋時に書いた言葉は全て無意識に、猛烈に書きたくなって夢中で書いているものが大半で、にも関わらず非常に哀愁に満ちた作品に仕上がっている(笑。
大昔、シンガーソングライターが「想像で歌詞を書いている」と言っているのをテレビで見たことがあるのだけど、あれは嘘だなと今なら分かる(笑。ひとの心を動かす言葉というのは、書き手に猛烈に感じる"何か"があって、捻り出すというよりは、書きたくて書きたくて、むしろ書き残さないとやってられないくらいの衝動に駆られて生まれた言葉なのではないかと思う。でなければ、ひとの心は動かせない。
私の書いた日記が陽の目を浴びることはないけれど、日記を通してこの1年の軌跡を辿ることは、時に苦しく悲しくもなるのだけれど、わたし自身がどんな気持ちで再生してきたのか…自分の心の成長に気付くことができる良い機会になっている。自身の新たな一面を発見できるのだ。35歳を生きるひとりの女として、世間的には大人扱いなのだけど、心はまだまだ未熟なのが現実。まだまだ成長が必要だから、前を向いて歩みを重ねて、真っ当な人間に近づきたいと思う。
さて、話が長くなってしまったのだけど、テネシーワルツを聴いていることに深い意味はない。だけど、久しぶりに、失恋直後に聴いていたプレイリストを覗いた時に、ふと目にとまったのがテネシーワルツだった。
この歌は、"ワルツ"に込められた、ほろ苦い思い出を哀愁たっぷりに表現した1948年のアメリカの歌だ。主人公の身の上が、他人事では済まないくらいに、失恋直後の私とかぶっている歌だったために、プレイリストに追加したと記憶している。しかし、境遇が似すぎて当時の私には酷だったためか、あまり聴けなかった歌だ。…だけど不思議なことに、今なら、この歌の芸術性に酔いしれることができる。むしろ…、こんな名曲のような体験が出来たことを光栄に感じる2022年春…(笑。
勝手な見解だけど、この歌は、主人公が自分の恋人を友人に紹介した日の夜を回想している物語。きっと何の疑いもなく、久しぶりに再会した友人に自分の恋人を紹介しただけなのだと思う…。まさか、それがキッカケで友人と恋人が惹かれあい、恋人を失うことになるだなんて夢にも思わなかったはず。あの夜、友人と恋人がワルツを踊ったことを、ひとり思い出しながら、人生の悲しみと切なさを感じている…という歌だと私は理解している。私はこの主人公が感じる"人生の切なさ"が痛いほどよく理解できるし、この主人公の物語は私の物語でもあると思っている。悲しい夜の出来事なのに、ワルツを踊る二人が美しく見える不思議な歌。74年前の歌に想いを馳せる2022年の春です。
▼ テネシー・ワルツ/ホリー・コール
I was dancin’ with my darlin’
To the Tennessee Waltz
When an old friend I happened to see
Introduced her to my loved one
And while they were dancin’
My friend stole my sweetheart from me
I remember the night
And the Tennessee Waltz
Now I know just how much I have lost
Yes I lost my little darlin’
The night they were playin’
The beautiful Tennessee Waltz
Yes I lost my little darlin’
On the night they were playin’
The beautiful Tennessee
They were playin’ the Waltz
On the night I lost my love
わたしの愛しい人と
テネシーワルツを踊っていたら
古い友人と偶然出会った
彼女にわたしの愛しい人を紹介して
二人は一緒に踊っていた
そして友人はわたしから彼を奪ったの
あの夜とテネシーワルツを
今も思いだす
なんて大切なものを失くしたのか
私はあの夜 恋人を失った
二人が美しいテネシーワルツを
踊ったあの夜に
テネシーワルツが流れていた
あの夜に私は彼を失った