借りたトランプなど、レギュラーデック使用で『ガチで1度もインデックスやフェイスを見ないで当てる』ことは無理ですから、『1度もインデックスやフェイスを見ないで当てた』かのように巧妙に見せるマジックがメンタルマジックだと思います。ガチに見せるトリックありきのショー。
通常、「手品を見せよう」としていないメンタリストはマジシャンと一線を画する要素を見せるため、トランプを使わないとされています。
トランプで予言をすることと、ちぎった新聞紙で予言をすることは、同じトリックを使ったにせよ、新聞予言は手品に見えず、トランプ予言は手品に見えてしまうというサダメ(宿命)を背負っているからだそうです。
ブックテストなどのメンタリズムやカード当てのようなマジックをひと通り学んでしまった人は、何を見ても「超能力だ」とは思いません。「えっと・・・このケースはあのフォースか、あのギミック・・・」のように、自分が持っているデータと今見た現象を照合する作業をするだけです。その作業が続く限り、微塵にも「超能力」という回答や結論は頭にありません。
リーディングパスケースやThought Transmitterで2桁の数字を当てる現象を見ると、一般の方は不思議でなりません。喩え演者持参の財布を使ったにせよ、当てる仕組みが皆目見当がつかないためです。10人中、3人は「興味深いとかは別にして、タネがわからないね」、4人は「不思議なんだろうけど、なんとかして盗み見たのだろう。そうとしか考えられない。」、2人は「すごい手品!」、残った1人は「超能力かな?」という感想を持ちます。マジックを学んだわけではない方が見ているので、みんな原理はわからないんですけど、「サイコメトリー:読心術:透視」と考える人は10%ぐらい。凄みを感じる人を含めても3割。せいぜいこの程度ですが、メンタリスト側からすると充分に成功しているショーです。
テレビで演じられた超能力系のブーム(霊能力、催眠、占い、メンタリズム、スピリチュアル等を含む)も視聴者の3割が「スゴイ」と思えばOKだったはずです。
私はThought Transmitter等を使う側なので、どんな人が読心術系のパフォーマンスをしても超能力には見えません。仮にタネがわからないものがあったにせよ、タネがあるということはショーの匂いでわかります。
Thought Transmitterで言えば不思議の質を上げている要素は、「盗み見る隙がない」という時間と空間の狭さです。あまりにも早く読み取り、あまりにも『開けなさすぎる』隙間の無さ。知らない人が見れば充分に「超能力かも知れない」ぐらいの不思議には持っていけます。
となれば、トランプによる見慣れた王道手品:カード当てであっても、「超能力かも知れない」にまで持っていけるはずです。ただしそれが面白いショーになっているかどうかは定かではありません。
1枚引かせました。フリーチョイスです。
デックに戻させました。これもフリーです。
混ぜました。これも観客の手によって。
という条件で当てたとしたら、手品としてはトップクラスの不思議は保証できます。
好きな箇所から引いて、好きな箇所に戻し、好きなだけ混ぜていますからかなりフェア。
でも、演者がデック内を見て抜き出して「これですね」と演ってしまったら、「とてつもなく不思議なカード当てマジック」であって、「超能力かも知れない」とは感じにくいと思います。
1枚引かせました。フリーチョイスです。
デックに戻させました。これもフリーです。
このプロセスの間、演者が背を向けていて、向き直ることなくカードを言い当てることが出来たら。
おそらく8割ぐらいの人が「これはすごい」と思い、その中の半数の人が「超能力かも知れない」と感じそうです。カード当てであっても、ここまで不可能設定を高めれば充分にメンタリズムにも超能力パフォーマンスにもなります。
トランプという用具がどうしても『手品』を連想させるだけであって、Thought Transmitterなみのスキの無さを実現できれば、シンプルなカード当てでも立派にメンタリズム。
マジシャンはトランプのトリックを多々知っているため、「これを超能力としてみせることは不可能だ」と思ってしまうだけ。
マジシャンが別室にいて、隣の部屋にいるゲストが引いたカードを当てたら大丈夫、間違いなく超能力に見えますよ。
インターセプトはマインドリーディングとしてのメンタリズムとして有名です。
レギュラーデックから5~9枚フリーに選ばせ、ゲストが眼で見て決めた1枚を52枚1組のデックに戻して、シャフルしてから当てます。何故かショップではその仕組みまでも明らかにしてしまいました。
似た現象でメンタリズムではなくカードマジックに属するのがMental Reverseです。
レギュラーデックから5~9枚フリーに選ばせ、ゲストは1枚のみを覚えます。この1枚を数枚に混ぜ、52枚1組のデックに戻して、シャフルしてから、当てるのではなくひっくり返す現象です。どう考えてもThis is テジナ。何故ならありえないからです。
メンタリズムは「本当はありえそうなこと」をパフォーマーとして100%失敗せずに演ってみせるショー。冷静に考えれば何回かやれば起こりうることです。
マジックは「どう考えてもありえない。成し得ない。」と思われることを演ってみせるショー。何回やっても不可能なこと。そこにあるものは絶対にひっくり返らないのです。リバース現象はマジック。
Thought Transmitterやテレソート系デバイスなどのピークワレットで数字・アルファベット等を当てることは限りがある範囲の中でやっているため、起こりうること。そこに奥深さがあります。
ここを理解すれば、超能力っぽく見せるコツも掴めてくるはずです。
例
ハートのAとハートの2を用意します。
メンタリストが別室にいる間(背を向けていてもよい)、ゲストは1枚を胸ポケットに入れ、1枚を両手に挟みます。
メンタリストはどちらにAがあるのかを当てます。
率を捨て、条件を厳しくしただけですがとても不思議であり、超能力っぽさがありますね。