第1段階はデモンストレーションといいますか、偶発的に起こってしまう『ありえないカード当て』であり、あまりのありえなさゆえに仮に外れても観客は「ここからが本番なんだな?」と思ってくれる、保険付きの奇術です。

 

ノーセットのレギュラーデックを使います。

オモテウラのあらためを済ませ、だいたい半分ずつに分けて裏向きでテーブルに置きます。

演者が後ろを向いている間に、観客は好きなほうのパケットを手にとって存分に混ぜます。(2つのパケットをそれぞれ混ぜてから好きな方を選んでもOK。)

シャフルし終えたら1番底にあるカードを覚えさせ、テーブルに残っているパケットの上に重ねてもらいます。

 

ここで演者は向き直り、観客が覚えたカードを当てます。

 

 

混ぜられたデックをカットして、底にあるカードを当てることは厚みがあるため、マークドデックでも(直接的には)不可能です。その不可能さがわかっていれば上記の現象は演者が前を向いたままでも不可能であると理解できるはずです。

 

何故当てられるのか、その原理は大変シンプルです。

2つに分けたのは演者ですので、双方のボトムカードを覚えておきます。オモテを見せて「色んなカードがあります」とあらためて、何気なくピークしながらカットします。演者はボトム2枚をこの時点で知っています。ハートのQとクラブのQだったとしましょう。

ボトムが崩れないヒンズーシャフルをして、テーブルにパケット2つを置きます。

 

「1つ好きな方を選んでください」と言って観客が手にとった瞬間に背を向けます。観客のパケットのボトムがクラブの(ハートの)Qであることをここで知っています。

 

後ろを向いたままヒンズーシャフルの真似をして「混ぜてください」と言います。

「混ぜたら1番底にあるカードを覚えてください」 → 観客のシャフルが不充分の場合、ボトムカードは変わりません。これが当てる原理です。ヒンズーシャフルはボトムカードが変わりにくいということを一般の方は知りませんし、そもそも『演者がピークしてからパケットを置いた』とは予想だにしていません。

 

勿論上記は奇術マニア相手には通用しにくいのですが、演って損はありません。

観客がクラブのQのほうのパケットを取りました。混ぜさせます。そしてもうひとつのパケットに重ね乗せてもらいます。向き直って「この状況でカードを当てることは無理」と前置きしておきます。印象としてもそのように感じます。

「一応トライしてみましょう。先ずマークの色からわからないと話になりません。赤と黒・・・黒ですね」と訊いて「いいえ」であればクラブのQはカットされてしまったので「無理でしたね。では本番に行きましょう」のように進行します。「はい」と言われたらクラブのQを覚えた可能性が残っていますので「大きめの数字ですか」「絵札ですか」のように進行して「クラブのクイーンですかね」と当ててみせます。4割近い率で当てられます。当てられるというか大胆極まりないフォース。

 

色が黒で「はい」でも、「絵札ですね」で「いいえ」であればやはり「無理でしたね」とします。

 

コツは「絶対に成功させてやろう」と思わないこと。

当てたにせよ、仕組み(ヒンズーシャフルが甘かったこと)に気づく人はいます。

 

ではどうやって「絶対に成功させてやろう」と思わないようにするか、ですが。

これは仕切り直しでの『ノーセットで2枚のカードを不可能な状況下で当てる』別の原理を知っているということが条件です。いつでもそれが可能だというゆとりが、「絶対に成功させてやろう」と思わないことにつながり、大胆なピークも気づきにくくなります。マジシャンは自分が演ることに集中してはなりません。すればするほど怪しまれ、重箱の隅をつつくように突っ込まれやすくなります。

 

自分はゆうきともさんのトリプルスリーを知り、即席でのカード当てにはインパクトを含め、絶対の自信があります。そのため、上記のボトムフォースも気軽に出来るのです。

 

ここまでをひっくるめて、Perfect card location.としています。

意外ですが、ボトムフォースで終わってしまうことが10回中3~4回あります。

 

なお、『どちらのパケットを取ったのかを確認してから背を向ける』ことが苦手なら、見ないで背を向け、PUMPING :FISHINGによって当ててください。