思いやりのこころ/木村 耕一
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二宮金次郎の農村立て直し


 役人を一喝!

「人の命よりわが身の立場が大事なのか」



金次郎の出身地である小田原も、深刻な飢饉に襲われていた。

藩主の大久保忠真は江戸屋敷で病気で寝込んでいたが、

小田原の状況が心配でならない。

そこで、金次郎に、自分の代わりに小田原へ向かわせ、

領民を飢饉から救うように指示したのである。


その際、「非常用に蓄えてある米倉を開けてもよい」という特別な許可まで与えた。

金次郎が小田原へ駆けつけると、

そこは、飢えに苦しむ人々であふれ、想像以上の惨状であった。


もはや一刻の猶予もない。


すぐに城の米倉を開けて領民に与えようとしたが、

重臣たちの反対に遭ってしまった。


「殿が米倉を開ける許可を与えられたというが、

 我々には、まだ正式な命令が届いていない。

 そなたの言葉を信じて米倉を開け、後日、お叱りがあってはかなわんからな。

 確かに急を要する事態ではあるが、

 一度、江戸へ使者を出して、殿にお伺いしてからにすべきだ」



 これを聞いた金次郎は、重臣たちの前で言い放った。



「何万とも知れぬ人々が、今、まさに死に瀕しているのですぞ!


 江戸へ使者を出して、返事が来るまでに何日かかるとお思いなのか。

 その間に、国民の半数は餓死するでしょう。


 おのおの方は、人の命を救うよりも、

 わが身に罪が及ばないことのほうが大事なのでござろう。


 それが政治をつかさどる者の態度といえましょうか。


 ああ、なんと無慈悲な! あまりにも情けない!


 おのおの方は、領民を思う殿のご心労も、

 飢えに直面している人民の苦悩も、少しも分かってはいない。


 これ以上、議論しても何の意味もない。


 そこで、おのおの方に提案がござる。

 断食をしていただきたい。


 この議論が決着するまで絶対に食事を取らないでもらいたい。

 自身が暖衣飽食したままで、

 どうして明日をも知れぬ国民の気持ちが分かりましょうや。

 論より証拠、

 まずご自身が、断食して飢餓を味わえば、自然と結論が出るはずです」



その声は雷のごとく、人命を尊ぶ心は火のごとく、

徹底した理は矢のごとく、人々の胸を打った。


重臣たちは一言も反論できず、米倉を開くことに一決した。


かくて、数万の人民を救済する道が開けたのであった。




金次郎は、身も心も打ち込んで救助の陣頭指揮を執り、

二ヵ月半後に、大任を終えて、桜町領へ帰っていった。


金次郎に農村改革の援助を求める声は、この後も、関東全域からわき起こった。


まさに東奔西走の、忙しい日々を送っている。

七十歳で亡くなるまで、生涯、権力にこびず、地位を求めず、

自ら荒廃した農村を歩き回り、

悲惨な生活に苦しむ人々を救うことに尽力したのであった。


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現場を知らず、

人の苦しみが分からず、

まるで他人事としかおもえなければ、


人のためには何もできません。



医療者も、自分が患者になって初めて患者の気持ちが分かった、


とかもよく言われます。



とはいえ、健康なのにわざわざ病気になるのはもちろん、

入院するのも変ですし、


せめて、患者さんの声を聞き、

心を汲み取ろうとする努力は常に心掛けたいものです。









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