文藝春秋 2010年 07月号 [雑誌]/著者不明
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一学究の救国論


日本国民に告ぐ


           藤原正彦(お茶の水女子大学名誉教授)





1807年、ナポレオン占領下のドイツで哲学者フィヒテは、

「ドイツ国民に告ぐ」という講演の中で、

打ちひしがれた国民に祖国再生の熱いメッセージを送った。

熱き想いを共有する私は、フィヒテのひそみに倣い、

その柄でもないことを顧みず、以下を認(したた)めた。


日本が危機に立たされている。

何もかもがうまくいかなくなっている。

経済に目を向けると、バブル崩壊後20年近くにもなり、

その間あらゆる改革がなされてきたがどれもうまくいかない。

グローバル化に構造改革も社会を荒廃させただけで、

デフレ不況は一向になおらない。

財政赤字は世界一となり、なお増え続けている。

一人当たりGDPもどんどん低下するばかりだ。

失業率は増え続け、自殺者数はここ12年間毎年3万人以上を記録し、

世界トップうラスの自殺大国となっている。


(中略)



それに、学校にはモンスターペアレンツ、

病院にはモンスターペイシェンツと、

不満が少しでもあればおおげさに騒ぎ立てて

訴訟にまで持ち込む人々が多くなった。

人権をはじめとしてやたらと権利を振りかざす人間が多くなった。

かつてこういう人間は「さもしい」と言われたものだが。


政治、経済の崩壊からはじまり、モラル、教育、家族、社会の崩壊と、

今、日本は全面的な崩壊に瀕している。

それぞれの分野で、崩壊に気付いたそれぞれの専門家が、

懸命に立て直そうと努力しているものの、どんな改革もほとんど功を奏さない。



この国の当面するあらゆる困難は互いに関連し、

絡み合った糸玉のようになっていて、誰にもほぐせないでいる。

部分的にほぐしたように見えても大抵は一時的なものにとどまり、

全体の絡みには何の影響も及ぼさない。

我が国の直面する危機症状は、足が痛い、手が痛い、頭が痛いという

局所的なものではなく全身症状である。

すなわち体質の劣化によるものなのである。


漂流し沈下しつつある日本はどうなるのか。

日本人は今、深淵に沈み行くことを運命と諦めるか、

どうにかせねばと思いながら確たる展望もないままただ徒に焦りもがくばかりである。


古くより偉大なる文学芸術を生み、

明治以降に偉大なる経済発展をなしとげ、

五大列強の一つともなった優秀で覇気に富んだ日本民族は

一体どうなったのだろうか。

祖国再生の鍵はどこにあるのだろうか。



(つづく)


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古き良き日本の文化に立ち返ることで、

見えてくる明るい未来はきっとあると思います。





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