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■理不尽な苦しみ
ホスピスの医師という仕事をしながら、
私はいつもこの難題と向き合うのです。
私の師匠の村田久行先生(京都ノートルダム女子大学教授)は、
この一連の苦しみのことを、
「スピリチュアルペイン-存在と意味の消滅から生じる苦痛」
と呼んでいます。
意味というのは、生きる意味です。
自分の存在そのものと、生きる意味を失うから苦しむわけです。
この苦しみを克服するためには、生きる意味を再構築しなければなりません。
再構築できるようなケアを考えていかなければならないのです。
自分の人生を、そしていのちそのものを失う。
あるいはそこまで極端な状況ではなくても、
会社からリストラされるとか、
部活動のレギュラーから外されるとか、
あるいはいじめなども、
「自分の居場所、存在意義を失う」という意味で言えば同じです。
居場所を失い、そこで生きることができない状態になった時、
それまでの生きる意味を奪われたときに、人間はいちばん苦しむのです。
そんなとき、人は遠くに逃げ出したくなります。
極端に思いつめれば、死んでしまいたくなります。
日本では年間3万人以上の人が自殺しています。
その背景にも、こういう苦しみが多分あるだろうと思います。
こういう苦しみを抱えたとき、人は自分を傷つけてしまったり、
あるいはその苦しみのはけ口を他人に向けて、人を傷つけてしまうのです。
単なる「うつ」で片づけてしまえる問題ではありません。
(以上)
以前、紹介した「なぜ生きる」の一節を思い出しました。
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米国の著名な心理学者チクセントミハイは、
「生きる目的」がわからないから、
どれだけ利便と娯楽に囲まれても、
心からの充実が得られないのだ
と説明しました。
自殺の根本原因も、
「人生の目的の重さ」
「生命の尊厳さ」を、知らないからではないでしょうか。
「そんなにまでして、なぜ生きるのか」
人生の根底に無知であれば、ひとは死を選んでも決しておかしくないでしょう。
一億円の宝くじの当選券を大事にするのは、
一生働いても得られぬ価値があると思うからです。
ハズレくじなら、ゴミ箱へ直行でしょう。
割れたコップや修理のきかないパソコンなどと同様に、
価値のないものは捨てられます。
自分の生命が地球よりも重いと知れば、
「ハズレくじ」を捨てるように、
ビルからの投身も、他人の命を虫けらのように奪うことも、できるはずがありません。
「人生には、なさねばならない目的がある。
どんなに苦しくても、生き抜かなくては」
と、生きる目的が鮮明になってこそ、生命の尊厳が知らされるのです。
子供の相次ぐ自殺やエスカレートする殺人に、世の中は騒然としています。
家庭の問題だ、教育の欠陥だ、少年法が悪い、病んでいる社会。
解説は十人十色です。
しかし「苦しくとも、生きねばならぬ理由は何か」、
肝心の「人生の目的」が抜け落ちた議論が続くだけでは、
対策も立てようがないでしょう。
(以上)
終末期医療において、
実は一番大事な問題ではないかと思います。
「苦しくとも、生きねばならぬ理由は何か」
「ブラックジャックによろしく」
でも、患者が医師に問いかけるシーンがあります。
自分だったら、何と答えられるだろうか。
自問自答せねばと思います。
何も答えられない自分ではありたくないです。