ぼくが医者をやめた理由 (角川文庫)/永井 明
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 あとがき



 内科の医者として、十年ほど病院に勤めた。

そして、医院を開業した・・・ということなら、

ごくまっとうな道だった。


それが僕の場合、どこでどう間違えたのか、

そして、医者をやめてしまった。

ここ数年は、本をつくる仕事をしている。


 熟慮の末の選択ではない。

はずみで医者をやめ、はずみで本をつくっている、

というのが実際のところだ。

新しい仕事は、楽しくもあり苦しくもあり、

不思議と後悔はなかった。


ただ


「病気とは 何か、


 医者とは 何か、


 病人とは 何か、


 人間とは 何か・・・」


本来、医者であったときに、

ちゃんと考えておかねばならなかったことが、

いまさらのように、心の中に大きく広がっていった。


簡単に答えは出なかった。


 ぼくは根性無しだから、難問にぶち当たると、

いつも逃げることにしている。


しかし、この問題に関しては、なぜかこだわった。


おおげさに言えば、これをクリアしなければ

一生、根無し草、

そんな恐怖心があったからだ。


恐れは人を勤勉にする。


ぼくは、かつてない真面目さでこの問題に取り組んだ。



(以上)



こういうことを考えておかないと、

本当に辞めたくなってしまう時に、

踏ん張る理由というか、

支えとなるものがないような気がします。



目の前の患者さんは、まさに


「人間として生きるとは何か」


「死ぬってどういうことなのか」


ということに向き合っているのに、


ただただ無力感が突き付けられるというか、


自分も病気になったら、ぶち当たるんだろうな・・・、とか、


漠然と思うだけなのは、


あまりに切ないです。



答えは簡単にはでなくとも、


あきらめるに、あきらめきれない問題だし、


逃げられない問いではないかと。




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