- 医者という仕事 (朝日文芸文庫)/南木 佳士
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役としての医者と、
本来の卑小な自分との落差を意識し、
悩む。
私の関心は
こんな小心な医者たちにばかり向いてしまうのである。
たとえば、癌を告知するとき、
医者は自らの死生観を厳しく問われる。
教科書に書いてある通りの言葉を口にしても、
人生経験豊富な患者さんの心に共鳴することは、
まずない。
等身大の人間として、
先に死んでゆく人間に対する
畏敬といたわりの素直な気持ちを表すには、
自分も遅かれ早かれ必ず死んでゆくのだとの
強い自覚が不可欠である。
この発想は、
白衣を着て医者の役を演じていればこと足れり
とする人たちには出てこない。
裸の、何者でもない人間としての自己を意識する者にしか
出てこない考え方なのである。
白衣を身につけて
神の使いのような役を演じている自分と、
あまりにか弱い心身の持ち主である人間としての自分との
差異、軋轢。
人生の真実はまさにこのあたりの暗やみに潜んでいるのだろう。
(以上)
死生観こそ、
医学生のうちに学んでおきたいことだと思います。
人生経験では、到底およばない患者さんと接することになるならば、
せめて学ばなければ、
学ぶ努力をしなければ、申し訳ない。
悩める人を目の前にして、何もできない、
そういう方と接することになると知りながら、
自分も、「死」という同じ未来を抱えていながら、
全く考えてこなかった。
そんな後悔はしたくない。
今できることは、今やりたいです。
この道を選んだからには、
死生観は、もはや自分ひとりの問題ではないわけだし。