- 医者という仕事 (朝日文芸文庫)/南木 佳士
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医者と患者の立場は
健康者と病者、
あえて言ってしまえば、
強者と弱者の関係に陥りがちなものである。
受験戦争の勝者として医学部に入り、
そのまま医者になってしまうエリート気取りの若者たちの中で、
弱者の本音を理解できるものは少ない。
医学部では弱者を思いやるような教育はなされないのか、
といぶかる人もいるだろうが、
少なくとも私の頃にはなかった。
もしあったとしても、
病む人への思いやりとか、
人間としての本質的な優しさといったものが
大学教育によって教え込めるものなのかどうか、
はなはだ疑問である。
三十代半ばから四十歳代の働き盛りの医者仲間たちと雑談し、
話題が大学受験の頃のことに及ぶと
必ず出てくる結論がある。
今、おれたちがやっている仕事の内容から考えて、
あれほど難しい入学試験は必要なかった。
そして、入試のときに最も問われるべき資質は、
学力ではなく優しさであった、と。
(以上)
大学での教育に、
「人間としての本質的な優しさ」を教わろうとは思わない。
教えられて、「そういうものか」、と
理解できるほど単純なことではないのは分かるから。
こういうのは、
主体的に、自発的に取り組まないと
身に付くものではないし、
自分の問題にならない。
しかし、
「思いやり、優しさこそが、
医療の現場では大切なんですよ」と、
その重要性は、もっと訴えてもらいたい。
何が大事なのかさえ教えてもらえず、
「現場に出てから、自分で考えなさい、
感じ取って、学んでください」
では、心の準備ができない。
準備できたこともあったんじゃないか、
と後悔したくないです。
あるべき姿を示してもらいたいとは、期待しないけれど、
いい医者とはどんな医者か、
現場でぶち当たる壁とは、どんな問題なのか、
患者さんは、どんな悩みを抱えているのか、
課題は
「人間としての本質的な優しさ」
ならば、医学生も人間、
医学生自身の問題として考えることもできる。
臨床の現場への体験実習や、
医者、患者さんの生の声を聞く機会さえあれば、
医学生だって、それぞれに何かを感じ、得るものはあるはず。
それは、教え込まれるのとは違う。
考える機会が、もっとほしいです。
考える材料、経験された方々の感想、本音、
先達の智恵が。