生命学をひらく 自分と向きあう「いのち」の思想/森岡 正博
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■ こころの問題


 ここで言いたいのは、こころの問題です。


体の治療はずっとやってきて、これ以上はすることはない

あとに残るのは、こころの問題です。

それが大きく浮上してくる。


患者さんがこころの問題を、

医療にたずさわる人に問いかけることは、じつは多くあります


それを、看護婦さんが担ってしまっている。

ところが、看護婦さんといっても、熟練した、

人生のことをよくわかった四十代、五十代の人ばかりではありません。


あなたたちくらいの、二十代の看護婦さんもすごく多い。

そういう人たちに問うわけです。


五十代、六十代の患者さんが。


あなたたちならどうしますか。


看護師を目指す人は、

自分の将来のこととして考えてほしい。

医者になりたい人は、

もし自分がその場に居合わせたらどうするか、考えてください。


自分はまだ二十代で、

真っ暗な夜に患者さんのベッドのそばへ行って、

もうすぐ死ぬとわかっている患者さんに、


「自分はどうなるんでしょう」


と言われてごらん。


つまり、あなたたちのお父さん、お母さん、

おじいちゃん、おばあちゃんくらいの人たちに、

そういうことをぼそっと言われてごらん。


これからの医療は、患者さんからのこころの悩みや訴えかけ

つまり専門用語で言うと「こころのニーズ」を受け止めなければならなくなるんです。


いまのところ、病院の中では、

そういうことをあまりちゃんとやってはいません。


なぜかというと、日本の医療はとにかく

病気を治す、骨をつなぐ、死にそうな患者さんを生き返らせる

というようなことを、まず先にやらなくてはならなかったから。


日本の医療は、患者さんのこころの問題にまで手を回す余裕がなかった

日本はまだ貧しかった。


でも現在、日本も豊かになりました。


ほとんどの人が病院で死ぬようになりました。

体のいろんなところを修理するような医療は、かなりできるようになりました。

今後はもっと治るようになるでしょう。


最後は、死に直面した患者さんのこころの問題が、

ごそっと残るのです。


病院の中で彼らが、


「死ぬってどういうことなんでしょう」


「死んだらどうなるんでしょう」


「私は心細いんです」


と訴えかけたとき、

看護婦さんやお医者さんは、


「それは私の専門じゃないからわかりません」


と言って済むか、ということです。



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将来、問題になることが分かっているならば、

こういう問題も、教育の一環として、学ぶべきだと思います。


「私の専門じゃないから分かりません」


と言われてしまう患者さんは、もう心を開いてくれることはないでしょう。


(たとえ分からなくても、そんなことを言う人は少ないと思いますが。。)



哲学の分野なら哲学を、

宗教の分野なら宗教を、


食わず嫌いではなく、

綺麗ごとでもなく、

生きる力をもった智恵として

そういうことも、できるだけ学んだうえで、

患者さんに接することが出来ればと思います。








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