本書は、著者が亡くなった翌年1965年に出版された書籍です。友人たちが著者の意志を継ぎ、原稿を整え、写真家チャールズ・プラットやその他の人の写真を入れて一冊にまとめられました。アメリカ・メイン州にある別荘で、著者が姪(本文中では、甥)の子どもと過ごした経験をもとに書かれた作品です。


著者は、「地球の素晴らしさは生命の輝きにある」と信じていました。そして、世界中の子どもに、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー = 神秘さや不思議さに目を見張る感性」を授けてほしい。「この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、私たちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることに対する、変わらぬ解毒剤になる」と書き残しています。


地球の美しさを感じるのも、探求するのも、守るのも、そして破壊するのも人間です。環境破壊や環境汚染について考える前に、大人も自然の素晴らしさに目を向けることが、大切なのかもしれません。更に、自然にふれ、心が育まれることで、思いやりのある人が増えるのだろうと考えずには、いられませんでした。


子どもを自然の中に連れ出し、楽しませる。子どもと一緒に空を見上げ、夜空や黄昏の美しさ、流れる雲、夜空に瞬く星をみる。風の音を聞く。雨の日には雨を感じ、海から空へ、そして地上へと姿を変えていくひとしずくの水の長い旅路に思いをめぐらせる。部屋の植物でさえ、植物の神秘について、子どもと一緒にじっくり考える機会を与えてくれる。しかし、発見の喜びや感激、神秘さなどを子どもと一緒に再発見し、感動を分かち合える大人が、子どものそばにいる必要があります。


以下引用

「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。子どもたちが出会う事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生みだす種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子を育む肥沃な土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕す時です。美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なものにふれたときの感激、思いやり、憐れみ、賛嘆や愛情などのさまざまな形の感情がひとたびよびさまされると、次はその対象となるものについてもっとよく知りたいと思うようになります。そのようにして見つけ出した知識は、しっかりと身に付きます。消化する能力がまだそなわっていない子どもに、事実をうのみにさせるよりも、むしろ子どもが知りたがるような道を切りひらいてやることのほうがどんなにたいせつであるかわかりません。