現在、科学技術の進歩に伴い、新しい人工化学物質が年々増加しています。※1 本書では、「不都合な」化学物質が、「どのように地球をめぐるのか、ヒトや野生生物にどのような影響を与えるのか、またそれぞれについて何がどこまでわかり、何がまだわかっていないのか、どう判断し行動することが大切なのか」という事が解説されています。そして、「不都合な物質」として、POPs(ポップス:残留性有機汚染物質)※2 やマイクロプラスチック、PM2.5、水銀やカドミウムなどの重金属に焦点が当てられています。
「不都合な物質」とは何か?
化学物質には、便利な性質があります。しかし、「環境残留性」や「生物濃縮性」、「毒性」が高い性質を併せ持つ物質のことを、本書では「不都合な物質」と呼んでいます。3つの性質を持つ物質は、日本では「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」で第一種特定化学物質に指定され、管理されているようです。上記3つの性質に加え、「大気や水の動きに乗って越境移動する性質を併せ持つ物質」は、国際的にはストックホルム条約で、厳しく管理されています。「ストックホルム条約の対象物質は、POPs(Persistent Organic Pollutants)と呼ばれています。」
最近、マイクロプラスチック(直径5㎜以下のプラスチックの破片や粒)が世界中の海に広がっており、海洋生物の体内から見つかっているというニュースを耳にします。実際、本書によると、化粧品や洗顔料に配合されているスクラブ(みがき粉)としてのマイクロビーズや「ポリエステルやナイロンなどの化学繊維の衣服を洗濯するときに発生する洗濯くず」、「ポリウレタン製やメラミンフォーム製のスポンジやアクリルたわし」の断片も、下水処理で除去しきれずにマイクロプラスチックとして、1〜5%程度は川や海に放流されているとのことです。マイクロプラスチックの多くは、もともとは、レジ袋やコンビニの弁当箱、ペットボトル、お菓子や食品のパッケージなどのプラスチックゴミです。
マイクロプラスチックの問題は、プラスチックに含まれている有害化学物質が、海洋生物の生態系に影響を与えること、生物濃縮された魚介類を食べる私たちにも、「環境ホルモン」として影響を与える可能性が高まることです。現在、全世界で年間約4億トンものプラスチックが生産されているとのデータがあります。※3
便利なプラスチック製品ですが、添加剤として様々な化学物質が加えられています。さらに、マイクロプラスチックとして海を漂う間に、海洋中に残留する有機汚染物質を「吸着していく」ことがわかっているようです。プラスチックは、生物分解されずに長く地球上に残る「環境残留性」の高いゴミです。つまり、マイクロプラスチックによる汚染は、次世代への「負の遺産」ということになります。
※1
CAS(Chemical Abstracts Servise)
https://www.cas.org/cas-data/cas-registry
※2
環境省:POPs
http://www.env.go.jp/chemi/pops/
※3