主人公は不動産業界に就職を希望する大学4年生の女の子。アルバイト先の葬儀場を舞台にした別れ、悲しみ、喪失感といった心情をテーマにした連作短編小説です。
本書では、人間関係に悩み焼身自殺した中年男性の死、不慮の事故による妊婦の死、生まれた時から疾患をもつ幼い女の子の死、末期ガンと知りながら結婚をした若い夫婦の死、そして主人公の姉と祖母の死に関する物語が綴られています。
いつか必ず訪れる「死」。
しかし、遺族にとっての「死」は特別なものです。
本書では、亡くなった人の気持ちを汲み取り、遺族がいかにして身内の「死」を受け入れていくかが各物語で描かれています。
人の「思い」や「気持ち」に「寄り添う」ことの大切さを改めて考えることができました。
葬祭業界と葬祭ディレクターの仕事にも光を当てた、心温まる小説でした。
ただ、描かれている物語は悲しく涙、涙でした。