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調べる技術・書く技術
野村 進
以下、
ハイライトした文章を中心にまとめてみました。
あるテーマを設定し、
それについて調べ、
人に話を聞き、
最後にまとめる技術を紹介するのが、
本書のねらいである。
ノンフィクションというジャンルが蓄積してきた調査と執筆の技術の中から、一般の読者にも役立つにちがいないフォームを伝えるのが、本書の最大の目的なのである。
国立国会図書館のホームページを開いてみよう。ここは、蔵書の質量ともに日本最高の図書館である。資料の検索に取りかかるやいなや、あなたが書きたいと思っているテーマでこんなにも大量の本が出版されていたのかと圧倒されるにちがいない。
テーマを決めるときには、
この「チャップリンのステッキ」を見つけさえすればよい。
本来の意味での「独創」ではないけれど、それまでのくすんでいた色合いががらりと変わって、鮮やかな印象をもたらすだろう。読者の側には、それが「独創」と受け取られるのである。
ノンフィクションを書くという仕事には、深い充足感がある反面、さまざまな〝シンドさ〟もつきまとう。特にプロで生きていこうとすると、自分の書きたいことを書くだけでは生活できない現実に、すぐさま直面する。そこで、やむなく意に染まぬ仕事も引き受けるはめになるのだが、そんな仕事でも専念しさえすれば案外容易に生計が成り立ってしまう。書きたいものだけでは食えないのもこの世界なら、仕事を選ばずにこなしていけば食えてしまうのもこの世界なのである。
書きたいけれど食えない。食えるけれど書きたくない。このジレンマをほとんどのノンフィクションライターが抱えている。だが、ここで易きに付くと、沖合に流される小舟のように初志は遠ざかっていく。
そのテーマが発表するに値するものかどうかを、私なりに検討するポイントが五つある。
①時代を貫く普遍性を持っているか。
②未来への方向性を指し示せるか。
③人間の欲望が色濃く現れているか。
④テレビなどの映像メディアでは表現できないか、
もしくは表現不可能に近いか。
⑤そのテーマを聞いた第三者が身を乗り出してきたか。
取材のとき、絶対に避けたいのは、先方に「こいつは俺のことを何も知らないのだな」とか「この人、まるで無知じゃないか」と思われることだ。
どんな人でも、こちらの情報不足がわかると、話す気が削がれるか、内心あきれるか、馬鹿にするか、そのいずれかである。これでは、せっかくのインタビューが台無しだ。相手との会話が広がったり深まったりする可能性も、ほかの誰にも打ち明けたことのない秘話を聞かせてもらう機会も、自ら放擲したようなものである。
テーマが決まり、実際の取材に赴く前には、手に入れられるかぎりの資料に目を通しておく。これが、取材準備の第一歩である。
情報収集の方法 資料収集に対する基本的な姿勢は、「貪欲に、幅広く」である。
ノンフィクションを取材するために必要な資料を得るメディアは、その情報の鮮度から言うと、ネット、テレビおよびラジオ、新聞、週刊誌、月刊誌、単行本の順番である。
一方、情報の確度から見ると、単行本と新聞が比較的高く、最下位にはネットが来る。
ネット情報は重要だが、ノンフィクションの執筆を前提にしているなら、大半はガセネタと疑ってかかるに越したことはない。
たとえば、ウィキペディアに書かれている事柄も、鵜吞みにしてはいけない。
私の場合、取材の相手や対象について、まずネットで大雑把に検索したあと、新聞、週刊誌、月刊誌、単行本などの活字による記録や、フロッピーディスク・DVD・ビデオなどの映像記録、ネット・MD・CD・テープなどの録音記録にあたっていく。
精読すべき本、通読する本、拾い読みでかまわない本を選別する。 ……関連書を全部読む必要はない。「地球温暖化」のような大テーマで関連書を全部読もうと思ったら、時間がいくらあっても足りない。
ただ、どの分野にも必読書があるので、それは一度と言わず、二度、三度と精読すべきだ。どれが必読書かは、その分野の専門家たちによる言及や引用の仕方で、簡単にわかる。
書き出しに全神経を注ぐ
書き出しをどうするか──、これが最初にぶつかる難題である。
書き出しの大切さは、いくら強調してもしすぎではない。
書き出しには、その文章を書く力の七、八割を注ぐべきだとすら、私は思う。
どんな状況下で読者が文章を読むのかに思いをめぐらしてみると、書き出しの重要性がよくわかる。通勤・通学の途中、休憩時間、食事の最中、トイレの中、就寝前のベッドの中……、身も蓋もない話だが、ひまつぶしに読む場合が大半ではなかろうか。最初の五、六行に目を通して興味が湧かなければ、さっさとページをめくっていく。あなたや私がふだんしているとおりのことを、私たちの文章を読む読者もするのである。
書き出しで見放されたら、あとにいくらよいことが書いてあっても、読んでもらえない。だからこそ、書き出しに全神経を注ぐべきなのである。
書き出しに鉄則はない。
読者に「おや?」と思わせれば、どんな書き出しでもかまわない。
ただ、初心者のうちは、いきなり会話文というのは避けたほうがいい。また、「ドーン、ドーン」「ワァー、ワァー」「ぷかりぷかり」といった擬音語や擬態語も使わないほうが無難だろう。
ボブ・グリーン『アメリカン・ビート』より「お尻のコピー」
『アメリカン・ビート』と『チーズバーガーズ』は名作
以上、
第一線で活躍するジャーナリストの経験から導き出された「調べる技術・書く技術」が明かされています。
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