【時代劇局長のズバリ感想文】

漫画『花の慶次』に夢中になっている友人がいる。しかし、『天地人』は今まで一度も見ていないらしく、『今からでも間に合う』とこれまでの物語を説明し、『次からドラマを見るように』と伝えたが、今日はちゃんと見たかな?そんな気持ちの中、今週も感想文がスタートだ。


①愛の詩人

冒頭の言葉は『愛の詩人』。そして、”逢恋”というタイトルに、作が直江兼続。直江兼続の詩が紹介された。私語今宵別無事、共修河誓又山盟と・・・2つの詩だが、これは、1602年に、高畠(今の山形県高畠町)の亀岡文殊堂の詩歌の会で発表されたもので、現存する詩である。1602年という事は関ヶ原の戦いの2年後。上杉景勝が会津から米沢へ移封となった翌年、兼続が43歳の時である。この年の2月に、直江兼続の主催で漢詩や和歌など100首を詠じ、それを奉納する詠会が行われた。その時に奉納された和歌や漢詩は、今も文殊堂に納められているとの事。その内容から兼続が特定の女性を思う詩と言われている。”愛”の前立てでお馴染みの兼続だが、こんな詩を詠んでいたなんて、なんと素敵なエピソードであろうか。逃す事なく紹介してくれた大河ドラマ制作スタッフに拍手!


②亀岡文殊は筆者の思い出の場所

亀岡文殊は知恵の文殊として、合格祈願、大願成就にと多くの参拝客が訪れるが、実は筆者も中学の時に訪れた事がある。成績が思うように伸びず、親が連れて行ってくれたのだが、実は心の中では『神頼みしても無理だよ』と思っていた。しかし、今思うと両親の精一杯の激励だったのだと感謝している。亀岡文殊は筆者にとっても思い出の場所なのである。まさかそこに兼続の詩が納められているとは!これまでいろんな場所で兼続とはニアミスしてきたんだなぁ~。


③いよいよ秀吉との決戦

本編はフラッシュバックで先週を振り返ってスタートした。ほんの1分弱の長さだったが、先週の話を受けて良い感じで始まった。この手法はなかなか良い。内容にもよるが、毎回あってもいいくらいだ。物語は秀吉の誘いの手が兼続に迫っている状況。前回はうまくはぐらかした兼続だが、これからが本番である。先週の最後に結束を強くした景勝と兼続であったが、もうはぐらかしも通用しないという緊張感が漲っていた。しかし、利休の娘・お涼に『命を大切に』と言われるも、『相手は誰であれ、武士にはひけぬものがある』と兼続。その意志は固いようだ。さぁ、いよいよ秀吉との決戦だ。


④残念ながら、緊張感がなかった!

”決戦”は決戦でも、黄金の茶室に招かれたシーンに・・・。今で言う高級住宅、超高層マンションに招待され、セレブな生活を見せ付けられる・・・というようなものか。そして、茶室を離れ、満座の中で兼続を自らの家臣にしようと砂金の山を積む秀吉。おっ!第1回のシーンだ。兼続は自らの主は景勝以外にいないとその誘いを突っぱねた。第1回の時は、『頑固者!』という感じであっさりあきらめた秀吉。今回は明らかにあの時と違うが、残念ながら緊張感が漂わないシーンになってしまった。一歩間違えれば、命を落としていたかもしれないのに、さらっとし過ぎていた気がしてならない。音楽はアップな曲でクライマックス感を出していたが、あまりもテンポが速過ぎて・・・。秀吉の顔にも笑みがこぼれていた。う~ん。せっかくのシーンなのにもったいない気がしたのは筆者だけだろうか。後に『金銀に頼るしかなかった』と、その胸の内を語るが、緊張感のないシーンの後だっただけに、イマイチ説得力がなかった。


⑤よくわかんねー

秀吉は、『あの目じゃ。真っ直ぐな目。覚悟があった』と兼続を褒めるが、北政所に黄金を積んだ事、刀を振りかざした事を叱られた。今回のタイトルの『関白を叱(しか)る』とは、北政所が叱ったという事だったのか?なんかしっくりこないなぁ~。そして、三成が『お暇を頂きとうございます』と秀吉に頼みに来るが、その理由は『ひとりの女を救いたいのです』との事。むー。よくわかんねー設定であった。


⑥一貫して”義”だった

宿所に戻った兼続は、家臣の志駄が景勝の命で文箱を燃やそうとしているのを見かけた。その文は景勝の遺言で、そこにしたためられた言葉に兼続は景勝の自分に対する信頼の深さを感じ、その言葉を一生の宝とすることを誓うのだった。自身の命と越後一国の命運をかけた景勝。遺言の中の”義を貫くべし!”という言葉は印象的だった。越後に帰る際、”義を貫いた”兼続にお涼は感激して別れを惜しむが、上杉上洛においては、一貫して”上杉の義”が描かれたのは素晴らしかった。これで十分、上杉の義を感じるとる事が出来たのでは?


⑦兼続と三成の関係も・・・

景勝は秀吉の推挙により、従四位下左近衛少将の官位を賜った。その後、兼続は千利休を訪ねるが、その際、『石田三成に気をつけよ』と言われる。『あの方の宿命、あの方を救いたいのだ』と、千利休はまるで秀吉亡き後の三成を予期していたかのようだった。その後、兼続は三成を訪ね、『おぬしのその正直さが心配なのだ。無用の敵を作ってはならぬぞ』と警告。そして、初音の一件から『お主はやはり優しき男じゃのぉ』と三成へしばし別れの言葉。”上杉の義”とともに、”兼続と三成”の盟友ぶりも、ますます濃くなった様子が描かれて良かった。


⑧初音とお涼は動関わる?

越後へと帰る兼続。途中、真田幸村を見つけ、『また合おうぞ』と一言。幸村の寂しそうな顔が印象的だった。今後の接点はいかに?!それはそうと、三成によって初音が無事だった事が分かったが、やはり初音の立ち位置が中途半端。なぜ、このように弱々しい女になってしまったのか?そして、千利休の娘・お涼も”好きになりそう発言”は今後どうつながるのか?初音、お涼をしっかり描いて欲しいものだ。


⑨もっとふさわしいタイトルは?

越後に着いた兼続。久々にお船と再会し、見ている筆者も少し落ち着けた感じ。しかし、世継ぎの件で仙桃院に叱られるが、『関白を叱る』ならぬ、『兼続を叱る』結果になってしまった。両者の”叱る”を意識的に演出したのかどうか分からないが、もっと今回の物語にふさわしいタイトルがあったのではないか?


⑩朝日姫のイメージ強すぎる?

家康がついに上洛した。その前に朝日姫も出たが、朝日姫はご存知!秀吉の妹。尾張国の農夫に嫁ぐが、その後夫と死別。その後再婚するが、家康を懐柔させる為に強制的に離縁させられ、家康の正室として嫁がされるのは有名な話。まさか朝日姫が登場すると思わなかったが、その容姿には驚いた。歴代の朝日姫も、失礼ながらあまり綺麗な女優が起用されなかったが、どうもこういうイメージが強すぎるのかな?


【来週の展望】

来週のタイトルは『与六と与七』。兼続と小国実頼の事だが、予告を見る限りでは加藤清史郎くんも登場するようである。度々登場するも、あまり存在感のない与七。婿に入った事も語られなかった。来週は与七がじっくり描かれるようで楽しみだ。