【時代劇局長のズバリ感想文】

先週は、石田三成についてじっくり描いたが、今回は真田幸村が主役だ。非常に人気のある武将だからこそ、心待ちにしていた人も多いだろう。今後は前田慶次という大物も残っているが、『幸村を語る前に兼続を語れ!』という回になった。では、感想文にいきましょう。


①戦国武将人気No.1

冒頭の言葉は、『戦国武将人気No.1』。先日放送された『決着!歴史ミステリー』でも取り上げられていたが、真田幸村が人気No.1というのは事実のようである。筆者も確かに好きな武将のひとりだ。思えば以前勤めていた会社に”幸村”という姓の女性がいたが、真田幸村ゆかりの人だったらしい。あの時もう少し話を聴いていれば・・・と思うと残念だ。


②原作と違う外見

今回のタイトルは、『真田幸村参上!』。今話で真田幸村を大々的に売り出そうとしている制作者の意図が感じられた。真田幸村を演じるのは、城田優さん。顔立ちが日本人離れしているが、日本人の父とスペイン人の母の間に生まれたハーフで、身長も188センチ、靴のサイズは29センチとの事。”イケメン”あるいは”男前”という言葉以外見つからない新進気鋭の俳優である。しかし、原作では『偉丈夫ではない。むしろ小男で・・・』。また、『顔立ちも美男というにはほど遠く、ひいでた額と大きな鼻を除けば、印象がうすい・・・』とある。おいおい!と突っ込みを入れつつ、人気No.1だから仕方がないんだろうなぁ~と思った。


③今回のポイントは”上杉の義”

”真田家からの使者”として上杉家にやってきた初音。そして、真田昌幸の娘であることを打ち明けた。真田は武田信玄に仕えてからは、織田、北条、徳川に仕えてきたが、初音が信長に仕えていた年と合っていないのが気になった。あれは人質としてではなく、間者だったかっ?そして今度は家康に敵対し、上杉に助けを求めてきた訳だが、真田は恭順の意をあらわすために幸村を人質に差し出した。兼続と泉沢が議論するが、『これも上杉の義じゃ』という景勝の言葉に人質として受け入れる事を決めた上杉。これが今話全体に関わってくるのである。


④兼続は女の敵?

忍びとして育てられ、いろんな武将に仕えてきた初音。それに対して兼続は『辛かったであろうのぉ~』と、初音が抱きついてきたのに対して抱擁・・・。兼続のモテモテぶりを表すエピソードになるが、兼続も兼続である。『その都度男を変えてきた・・・』と表現した初音に『辛かったであろうのぉ~』は、現実的にはありえない(笑)。そりゃ、確かに辛いだろうが・・・。当事者からすれば”優しい兼続”ではあるが、お船サイドからすれば、この行為は女の敵と言われても仕方がないのでは?男性として羨ましい限りだが・・・(笑)。


⑤ベスト・オブ・真田昌幸

『真田太平記』の丹波哲郎さんのイメージが強すぎるのか?今話で登場した岩松了演じる真田昌幸には違和感を感じた。確かに”クセモノ”である昌幸だが、『上杉に人質として行け』という言い方がストレート過ぎて、クセモノという感じがしない。堂々としているのは良いが、凄味を見せつけながら『人質に行け!』と指令を出した方がカッコ良かったのでは?昌幸よりも幸村の存在感を出すのは当然だが、幸村の親父という感じがしなかったのは残念だった。そういう意味では丹波哲郎さん演じる真田昌幸はパーフェクトであった。これまで、片岡千恵蔵をはじめ、北大路欣也、松方弘樹、中村雅俊などが真田幸村を演じてきたが、筆者のベスト・オブ・真田昌幸は間違いなく、丹波哲郎だ。


⑥惣右衛門は貴重な存在

樋口惣右衛門が久々に登場した。なんと!自分の息子よりも年下の17歳の後妻を連れて・・・。”一途な惣右衛門”の印象が強いので意外だ!と思った人も多いだろうが、後妻の名はよし。泉弥七郎重蔵の娘という設定だ。それが兼続の母という説もあるが、原作では”おふく”という名前が、なぜ”およし”に変更されたのはなぜか?まぁ、いいや。でも、惣右衛門には度々出て欲しいものである。お船の一言も良いが、時には惣右衛門の一言も欲しい。惣右衛門はそれだけ重要な役柄なのである。縁側兼続と一緒に酒を飲むシーンも良かった。惣右衛門がデレデレになっているとは思わなかったが、人間らしくていいのでは?


⑦原作とは違う人物像

真田幸村が上杉家にやってきた。原作では兼続が幸村を迎えに行く設定になっているが、時間の関係でカットしたのかも。原作では比較的穏やかな幸村という設定になっているが、大河では逆の設定になっている。それはドラマを面白く見せるためのものであろう。確かに海を見ながら話すシーンでも、原作では義について熱く語っていた。それを素直に聴く幸村。しかし、義なんてありえないと考えるのがこの時代。義を貫こうとする兼続に対して、心を開こうとしない幸村・・・。この設定はこれで良かったのでは?と思う。最初から優等生的な幸村だと説得力がないのだ。


⑧殺陣に苦言!

槍で泉沢と勝負した幸村だが、殺陣シーンがイマイチだった。確かに2人の表情がよく分かるが、スピードを殺してしまって、迫力に欠ける気がする。これもこういう映像が撮れるようになった時代の流れかもしれないが、筆者はいわゆる”チャンバラ”でいいと思っている。かつての大河ドラマ『MUSASHI-武蔵-』の巌流島のシーンでも同じような映像になっていたが、あれにはガッカリしたものである。最近の時代劇俳優は殺陣が下手・・・という指摘をいろいろ聞くが、せっかく林邦史郎さんという武術指導がいるのだから、もう少しカッコ良くやって欲しいのが正直な所だ。


⑨道徳の授業?

『槍を盗んだのは幸村では?』と再び決闘する泉沢と幸村。のちに子供が壊して修理に出していた事実が判明するが、とても良い話のようである。と、言いたいところだが、道徳の授業を見ているようであった。これも、人を疑うよりも信じよう!という上杉の義を教えているつもりなのか?

⑩理想の妻・・・

幸村の行為についてお船は、景虎の人質に出された話を出しながら『ここは好きにさせてやって下さいませ』と兼続に助言した。筆者が常盤貴子好きだからか?お船の言葉には『はい』と返事がしたくなり、お船の言う事なら正しいであろう・・・と個人的な気持ちが働く(笑)。だからか?お船の振る舞い、一言一言がとても素晴らしく見えて仕方がない。あー、やっぱりお船は筆者の理想の妻じゃ。


⑪器の大きい兼続

人を信じたことはないのか?たとえ裏切られても信じてみようかのぉ。その生き方の方が楽しいぞ』。兼続の言葉は幸村には直接響いてはいないようだった。そんな幸村を見て『あそこまで頑なであれば見上げたものじゃ』と評価。その一連の動きを見て、兼続は器の大きい上司という印象だ。さらに、徳川が大群を持って上田城に侵攻した事に対しては、危機に援兵を送る・・・。兼続は『それが上杉の義なのじゃ。また戻ってまいれ』と言うが、カッコ良すぎだ!


⑫義の話は続けて!

義をここまで徹底するなんて現実ではありえない話かもしれない。でも、その後、真田は徳川を打ち破り、『この度はお人よしに救われた。姉上が惚れたわけが分かりました。あの男に・・・』と、幸村が上杉の義に理解を示し始めた。1週で人の心をここまで変えるなんて展開が早いような気もするが、義についてのウンチクを必要最低限に収めたという格好。これはこれでいいのでは?十分説得力があった。そして、幸村が雪の中帰ってくるが、”兼続の義の精神を受け継ぐ男”という事なのだから、兼続と幸村の”義の話”は来週以降も是非続けて欲しいものだ。


真田信繁こと幸村?

紀行で、『真田信繁こと幸村』と紹介していたが、実際は逆だ。真田幸村の本当の名前は真田信繁。江戸時代に人気だった軍記物語『難波戦記』で、”幸村”が使われ、それが一般的となって今の世に伝わったものである。書状を始め、幸村が生きていた時代の史料に”幸村”という名前が使われるものはないらしい。だから正確には真田信繁。でも、幸村という名前はカッコ良いし、今さら信繁と言われても・・・という気がする。でも、紀行では『真田幸村こと信繁』と紹介すべきだと筆者は考える。


【来週の展望】

なんと!加藤清史郎くんが回想ではなく、新たに登場!予告を見る限りでは、コメディタッチという感じがするが、現在、CMでも大活躍中の加藤清史郎くんが再び見られるのは嬉しい限りである。