第20回 『秀吉の罠(わな)』(2009年 5月17日放送)

【時代劇局長のズバリ感想文】


①天地人通?


先週冒頭は、『本能寺の変』という言葉だけでスルーしてしまったが、今週はちゃんと解説が入っていた。『怒っているわけではありません』。これを見て、『景勝の事だ!』と思った方は天地人”通”だ!自慢するわけではありませんが、筆者はすぐに反応しました・・・。いやぁ~でも今週は、先週のスルーを挽回するかのように素晴らしい解説であった。景勝だけではなく、秀吉の事もしっかり紹介していて・・・それが本編にもしっかり反映されていたのは素晴らしかった!拍手!


②撮影協力に米沢が・・・

タイトルバックの撮影協力というところに、わがふるさと”山形県米沢市”の文字が・・・。嬉しかった。ある時とない時があるが、あると格別に嬉しいものである。


③速い展開だが・・・

先週は本能寺の変を描いたが、物語はあっという間に進んだ。山崎の戦い、賎ヶ岳の戦いなどなど・・・秀吉が関白の職に就いていた。速いのでは?という声もあるだろうが、ここをダラダラ描いていると先が進まないので、これはこれでいいのではないだろうか?


④初音の訪問に驚いた理由は?

春日山の直江屋敷を初音が訪れていた。とても本能寺に信長と一緒にいたとは思えぬ風貌であったが、お船と対面するなり、『お船殿にとって兼続殿は2度目の夫・・・』と挑発的な態度。内心、『ムカッ!』ときただろうが、ここで怒るお船ではなかった。その後、初音と笑い話・・・。こんな奥さんを筆者も欲しいものである。
そこへ兼続が帰ってきたが、『帰ったぞ!』という言葉とお船に対する態度の変化が、時の経過をうまく表していた。しかし、”初音”という名前を聴いた瞬間の兼続は良くなかった。普通は、『初音?誰だっけ?』というケースだろうが、名前を聴いたとたんに反応するのは不自然な気がした。しかもまるで、浮気相手が家に殴り込んで、妻に談判しに来たかのように慌てる兼続。なぜ?と思ったが、筆者なりに解釈しよう。
恐らく兼続は、妻以外の女性とゆっくり話す機会がこれまであまりなかったと思われる。そんな中、初音という女性の印象が忘れられないほど強烈で、しかも、公の場以外の場所で濃い会話した女性・・・という過去が、罪悪感というカタチで甦ってくたのではないだろうか?そこまで深読みする必要はないのかもしれないが・・・。


⑤説得力ない初音の兼続評

兼続に『あなたにひかれる・・・』と言った初音。正直、これはイマイチ説得力ない発言だ。兼続のどこがどんな風に印象に残っているのか?それが説明不足だからだ。一目惚れに近いものなら分かるが、信長とのやりとりの中で、兼続がそんなに強烈な印象を残したとは思えない。確かに兼続は”義”を信長に訴えたが、あの時はまだ物事を純粋にしかとらえられない”小童”という印象しか筆者にはなかったからだ。
今さら言っても仕方ないが、ここは原作のように突然現れて、『あなたの事ならなんでも知っています・・・』というような設定にした方が良かった気がするが・・・。


⑥初音はこれから・・・

初音は兼続の元を離れる際、郷(さと)が真田の庄である事を打ち明けた。それでも兼続の問いをさらっと流し、兼続も”真田”にあまり驚いていなかったが、これからが長澤まさみさん演じる初音の活躍どころ。そうそう、真田幸村がそろそろ出てきてもいいのでは?


⑦お船は理想の妻像?

秀吉が『景勝に会いたい』と申し入れて来た。会うのを躊躇する景勝に対して、兼続は、『会ってみるべき。上洛はせぬと言っておきましょう』と訴えるが、景勝と兼続の表情は全く正反対だった。『わしはしゃべらん!』という景勝の心に何が隠されているのか?お船は『それ(しゃべらない事)は良い事』と言って理由を説明するが、お船の話に納得する兼続。う~ん、確かに良い事を言う。やはりお船は理想の妻だ


⑧三成の人物像を覆せ!

石田三成が久々に登場!のちに兼続と”盟友”になるが、そんな気配は今の三成には全くない。表情やトーンが低く、”暗い”という印象だ。これは戦略か?三成は”誤解されやすい男”と言われるが、『天地人』ではその部分をしっかり描くらしい。テレビドラマや映画では、必ず”悪”のように描かれる三成。現に三成を誤解している人も多いだろう。『天地人』では、三成の人物像を覆すような描き方をして欲しいものだ。


⑨しっかりせえ~!兼続!

景勝&兼続と秀吉&三成は落水城で会見する事になった。その前に秀吉を出迎えるシーンがあったが、秀吉は兼続に会うなり『久しぶりじゃな、兼続殿!』。それに対して『覚えていらっしゃいましたか?』と兼続。そして次々と上杉の家臣の名をスラスラと言う秀吉。正直、こんな事はありえない!実は兼続の事をなんとなくしか覚えていなかった秀吉。しっかり予習した上で、”ちゃんと覚えている”ような素振りを見せた点は、秀吉という人物をうまく描いていると思う。そして、『一度お会いしたいと思っておりました・・・』と言う兼続に、三成は『こやつ覚えておらぬな』と内心思いながらも『さようでござるか・・・』。このシーンを見ながら、『兼続、一度会っているだろうが・・・しっかりせえ~!』と突っ込んでしまったのは筆者だけではないだろう。


⑩4人の俳優

秀吉を演じるのは笹野高史さん。”実は秀吉役を前から狙っていた・・・”という笹野さんはうまく秀吉を演じていると思う。さすがベテラン。一方、景勝を演じる北村一輝さん、兼続を演じる妻夫木聡さん。三成を演じる小栗旬さん・・・。このベテラン1人に対して若手3人という構図はなかなか見所があった。笹野さん以下、それぞれの俳優は他の3人をどう意識したのであろうか。物語よりも、この4人のやりとりが印象的なシーンであった。


⑪冒頭の言葉がつながっていた!

『怒っておられるのか?』と秀吉が景勝に聴いた瞬間、『これだー!』と思った。冒頭の言葉はここにつながっていたのである。お見事!こういう演出は大歓迎。むしろ、こういう方式でやるのも手では?


⑫三成の人物像・・・

石田三成は、直江兼続に対してあまり良い印象を持っていないようだ。忘れられていたからか?それとも隙を見せないためか?もしかして初対面の人が苦手?いろいろ考えてしまったが、従来伝わる”不正を極度に嫌い、情実も介さず、常に自らの信念に基づいて豊臣政権の行政を司っていた・・・”これが全てでは?分かりやすく言うと、自分にも厳しいが、他人にも厳しいという事かな?


⑬結果、オーライでは?

ずっと黙っていた景勝だが、最初に発した言葉が、『上洛仕る』であった。その言葉に驚く兼続。『上洛などしないと言ってやりましょう』と決意して会見に臨んだだけに、兼続はショックであっただろう。『秀吉の天下を認める事になる』と訴える兼続だが、『本能寺がなければ上杉は滅ぼされていただろう・・・この越後のために使いどころがあるだろう』と返した景勝。後ろ向きな発言かもしれないが、この言葉には妙に説得力があった。結果的に、秀吉の罠にハマった事になるが、これが秀吉と上杉の良好な関係に発展するのである。結果、オーライではないか?兼続!


⑭三成を理解出来た兼続

三成は非常に厳しかった。兼続に命の恩人を覚えていなかった事を問い、『それが義か?都合の良い時に振りかざすのが上杉の義か?』と追い討ち。誰もがムッとする言い回しで、兼続も三成に向けていた姿勢を変えるほどだった。確かに三成の言う通り。でも、ここで責めて何の得があるだろうか?そんな三成の不器用さが表れていたシーンだった。残念ながらここで今週は終わってしまったが、三成の言葉は兼続に突き刺さったのでは?でも、兼続は決して逆ギレする事なく、真摯に受け止め、やがては三成に感謝するものと思われる。それが三成を理解する事につながり、盟友となるのであろう。


【来週の展望】

松方家康が、秀吉と上杉の良好な関係を面倒!と斬り捨てるようだ。そして、『阿呆にはならぬ』と、今度は家臣団にも喧嘩を売る三成。そして、『3年ですよ』と菊姫。『俺のそばに・・・』と初音に言ったのは三成?それとも?そして、相変わらず兼続に説教する三成。いろんなシーンが見られそうだ。次週も期待しよう。