【時代劇局長のズバリ感想文】

今週は少し辛口でいきたい。史実を忠実に再現して欲しいという筆者の思い込みもあるかもしれないが、制作者に対して叱咤激励する意味で書かせて頂く。同じモノづくりを本業としている立場で筆者だからこそと思って欲しい。それでは辛口の感想文にいきましょう。

①女の戦国かぁ~

冒頭の言葉は『女の戦国』。女にとっても命がけの戦いであった・・・という話だが、政略結婚について、図を使って丁寧に紹介していた。今でも決してない事ではないが、そんな家柄にいない筆者にとっては考えられない事である。良い家柄の妻をめとるのはいいが、気にいらなかったらどうするのか?と単純に思ってしまうのだ。出会い系サイトが蔓延しているこの世の中。メールでコミュニケーションを取り、実際に会う・・・相手がどんな顔をしているのか?会うまでドキドキ・・・。ある種、これに近いものがあるのでは?と・・・。おっと!いきなりヘンな例えから始まってしまった。なお、筆者はそのような経験をしていない事を言っておく(汗)。

②やっぱり物足りない

本編は、仙桃院とお船が涙しているシーンから始まり、御館の乱が悲しい戦であった事を改めて伝えていた。先週の感想でも書いたが、美男子の景虎だからこそ壮絶な最期を遂げた方が、景虎の悲しさがより引き立った気がする。そういう意味では”悲しい戦”と言われても物足りなさを改めて感じた次第だ。

③過剰な良い人でなくてもいい

『兼続を家老に・・・』と言う景勝の言葉に、『私はここにいてはいけないのでは?』と身を引く考えの兼続。正直、こんな事を言っていたら戦国の世は生き抜けない。あまりにも綺麗に描きすぎだ。ここ数年の大河ドラマの主人公は、みんな『良い人』になりすぎている気がしてならない。兼続は”景勝を世継ぎに”という使命を実行に移しただけ。景虎が命を落としてしまった事を悔やんでいるとしたら、それは本丸を押さえた時点で想定出来た事。『それは違う。あの時そちが動かねば滅びていた』と返した景勝の言葉は的を射ている訳で、『兼続よ、何を言うか?』と思った。それ以上に、景勝が自分のふがいなさを恥ずかしく思っているのだ。それをうまくフォローしていくのが兼続の生きる道なのでは?兼続は確かに良いヤツだ。でも、過剰に良い人に描かなくてもいいのでは?

④普通の女の子になった菊姫

上杉と武田が正式に和睦した。25年に続いて戦い続けた両者だけに信じられない出来事ではあるが、不況のこの世の中でさえライバル会社が合併したりするのだから、それを例にとれば決して不思議な事ではない。そんな中で、山本圭さん演じる吉江宗信が、祝いの席で『兼続はこの上杉をどうしようとしているのだ!』と本音を口にした。ここでひと悶着あるのかな?と思いきや、これは後々のシーンに続いていく。
婚礼中でも不機嫌そうな景勝。そして、武田の姫を演じるのは『どんど晴れ』のヒロイン比嘉愛未さんだ。”気が強い”という設定の菊姫だが、初夜はありがちなシーンだった。『この程度でおびえるなら刺し違えようとしていました』。ここまでは良かった。しかし、『何があっても武田を助けると約束を・・・』と景勝に問う菊姫に対して『約束は出来ぬ』と景勝。それに対して反発する菊姫。おいおい、あんた普通の女の子になっとるやんけ。事実、こんな会話は現代社会の男女でもよくある事。正直に言えば文句を言われ、嘘を言って安心させれば、後々『あの時の言葉は嘘だったの?』と言われる。つくづく女性に本音を言う難しさを感じるが、嘘をつけない景勝に対して、ここは『一度嫁いだからには私も上杉の女。主人に従います』と言って欲しかった。それでこそ戦国の女で、ここでは菊姫は完全に普通の女の子になっていた。う~ん、筆者のキャラクターへの願望が強すぎるのかな?

⑤筆者がドラマを作ったら・・・

先週休んだ信長が今週は登場。信長の”着せ替え人形的存在”の初音の今回の衣装は着物であった。ブツブツ・・・と詩人のような事を口にする信長だが、今の時点ではどうでもいい事。今となっては遅いが、信長を出さない事で、信長が何を考えているか分からない!恐ろしい!という設定にした方が良かったのではないだろうか?やがて本能寺の変がくるが、これをどう描くか?脚本家、演出の腕の見せ所である。筆者なら物語に信長を全く出さず、”真田の忍者”として登場している初音が信長情報を随時兼続に入れさせ、”信長の姿が見えないからこそ恐ろしい!”という設定にするが・・・。

⑥兼続の存在はダイレクトに・・・

徳川家康も今回から登場した。演じるのは松方弘樹さん。かつてTBSの新春時代劇でも家康を演じていたが、今回の1回目は軽い感じのキャラで登場。幅の広い役者なので、今後狸親父的な家康もしっかり演じる事であろう。誰もが家康の年齢設定に突っ込みを入れるだろうが、キャスティングしてしまった以上はもう仕方のない事。しかし、信長と違って今後大きく関わってくる大事なキャラクターである事は間違いない。だからこそ、演技派の松方さんが必要だったのだろう。しかし、わざとらしいセリフがあったのはいただけない。『誰かおるのか策士は?』。かつての大河ドラマ『風林火山』でも、『誰か軍師がいるに違いない』というセリフがあったが、ここはダイレクトに『景勝を操る切れ者がいるらしい』と服部半蔵にでも伝えてもらった方がすっきりすると思うのだが・・・。

⑦景勝と菊姫はどんな夫婦?

兼続は、越後に春の訪れを告げる雪割草の話をして懇願。仙桃院の協力もあって、菊姫の心を開くことに成功した。『おいおい、やっぱり女の子じゃないか?』と突っ込みを入れつつ、『ご武運をお祈り申し上げます。留守はお任せ下さい』と言った菊姫には大きな拍手を送りたい。今後は兼続とお船の夫婦ぶりに注目が集まると思うが、景勝と菊姫夫婦の今後も楽しみだ。

⑧もっと丁寧な作りを

景勝は内乱を収め、名実ともに越後の第一人者の地位を占めた。そんな中、兼続は吉江宗信、直江信綱に呼ばれた。信綱には開口一番『わしはお主が気に入らん』と言われるが、『我らには思いもよらぬ才を持っておる』と、その実力を認められる。そして、婚儀の際に『この上杉をどうしようとしているのだ!』と言った吉江宗信には、『舵取りを任せたい』と言われ、兼続は重臣にも認められる存在になった。婚儀の言葉は褒め言葉だったのか?2人から言われた事で、景勝からの申し出に快く『はい』と答えた兼続。22歳の若さで家老になった訳だが、吉江宗信の真意がはっきりせず不満足であった。言葉や表情から心情を読み取れというのか?もっと丁寧な作りを望むなり!

【来週の展望】

本編最後に直江信綱が襲われたが、信綱は恩賞を巡るトラブルなどから毛利秀広によって殺害されるが、史実として伝わる刃傷沙汰のとばっちりを受けて・・・よいうより、”兼続を守るため”になっているようだ。う~ん、来週も辛口になってしまうのか?