宇多田ヒカル
「プレイ・ボール」(2002)
Album「DEEP RIVER」より

祭りの夜の真剣勝負

【狙いを定めて 
I'm throwing my heart at you】


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 【生意気そうと思われる第一印象気にしないで 
そう最高の防御は時に攻撃だと言うでしょ

という挑発的な一文で始まるこの歌詞では、
恋人になるかならないかの
過程で好きな相手に胸を焦がす
【私】の恋の駆け引き
歌われている。

Aメロ、Bメロで描かれる
野生呼び覚ます】ような【祭りの音】が響く
お祭りの神社の境内や、
好きな人の【横顔を染める】花火の色】
人びとの【帰り遅らせる】きれいな星】
といったムードあふれる
シチュエーションの一つひとつで

彼との距離を縮めたい、
彼の思いを確認しようとする

【私】の恋愛特有の
胸の高鳴りが聴こえてきそうだ。

 【勝負どころ】を捉えた
【私】は文字通り、
勝負に出る。
束の間の沈黙を破る question
九回の裏で魅せるピッチャーのように
I'm throwing my heart

 おそらく、この【question】は緊張から
会話が途切れてしまった
二人の間の沈黙を破る
「私のこと、好き?」や
「今日は楽しかった?」といった
彼の心に探りを入れる
セリフをさしているのだろうか。
もしくは、
私と付き合ってくれませんか?
という告白そのものかも知れない。

 【九回の裏で魅せる
ピッチャーのように

思いを彼に投げる【私】
わずかな隙見逃さぬ
ランナーのように

彼の心を盗む【私】
 サビの部分では野球に喩え、
恋の駆け引きが
展開していく。

 そして、曲の終盤のサビでは
華麗な逆転させた first impression
足元に武器を捨てるハンターのように
I'm showing my heart
 この【first impression】は最初の
【生意気そう】な【第一印象】を
指しているのだろう。
【生意気そう】な態度を崩し、
降参する【ハンター】のように
彼に心の内をさらけ出す【私】
彼からの「答え」はどうだったのだろうか。

「恋の駆け引き」というと真剣でない、
いうなれば遊び半分な
印象を受けるが、
この恋がそうなっていないのは、
夏も終わりの気配漂う八月末
あきらめないで
全力尽くしてもダメだったら
それもまた風流
という一文が匂わせる「高校野球」
のひたむきな球児のイメージ。

一人でも続けると決めた mission
という強い決意、そして、
誰にでも好きと言えるわけじゃない
の一文の「あなた一人だけが
本当に好きなんです」
という【私】の切実な気持ちがこちらに
伝わってくるからではないだろうか。


好きなフレーズ
【誰にでも好きと言えるわけじゃない】
誰にでも素顔見せるわけじゃない
誰にでも牙を向けるわけじゃない
という「誰にでも」シリーズ。

誰にでも「好き」とはたやすく言えないし、
素顔」も見せれない。でも、誰にでも
」を向けるわけじゃない。
「あなたにだけは、好きも素顔も見せたい。
牙も向けず心を許していたい。」
そんな思いが伝わってくる。