しばらく前に書籍代を節約しようと、AmazonのAudibleという朗読配信サービスを利用し始めたのだが、その中にナショナルというかPanasonicの創業者である松下幸之助さんの「道をひらく」という本があり、試しに聞いてみた。

 

実は二年前にこの書籍を買っていて、そこら辺の自己啓発と変わりないと思い、すぐに売ってしまった。今から思えば愚かな話だ。

 

二年経って聞いてみると、先人の知恵というか松下幸之助さんの人生経験からくる言葉が胸に沁みて、とても感動したのだ。やはり、人生はどうにもならない部分が多いが、それでも勇気を持って道を進むように歩んでいくことが大切という松下さんのメッセージが胸に迫った。

 

実際、自分は心の病にかかった経験があるので、今も療養中であり、総じて言えば思ったような人生を歩めたわけではない。納得のいかないことも多かったし、他人や世間に対して不信を抱いた事もあったりした。

 

それでも、最近は病院関係者の助けもあってだいぶ調子も戻り、二年前からは水彩画教室に通えるまでに回復してきた。

 

ところがである。調子の回復にホッとしたのか、初心を忘れたのか、最近はあまり絵を描けていない。これではいけないと思うが、なかなか筆に手が伸びない。そういう僕の姿勢はやはり製作枚数の少なさということで、水彩画教室の生徒さんにはバレていて、やる気のない怠け者と思われても仕方のない部分がある。僕としてはようやく自分のやりたいことがやれる人生に至ったという安心感のせいだと思っているが、それを他人に説明しても通じないだろうな。

 

ところが先日、始めて描いた風景画を先生に見せたところ、ことのほか褒めてもらい、かなりやる気が出た。次の週の教室では三時間程度で下描きを描き終えてしまった。

 

なかなかいい調子になってきたし、明日の土曜日には絵の具で着色に入ろうと思う。参考にする風景画家の先生の書籍も数冊揃えたし、試行錯誤あるのみだ。

 

先生に尋ねたところ、社会人の趣味としてこの教室を開いているという極めて常識的な答えが返ってきて納得したのだが、不満足な人生を生きてきた身としては、下手くそでもコンテストを目指してできる分だけは頑張りたい。入選でもして人生の思い出を作りたいのだ。

 

案外、下手なりに少しずつ上達していっているのが理解できる。美大受験生と比べると天と地ほどの才能の差はあると思うのだが、亀の歩み程度でも進んでいるのが面白くて興味深い。なぜか微笑ましい。

 

さて、明日は午前中に図書館に本を返却して、午後から水彩画の着彩に入ろう。そう、亀の歩みか。そういうのを観察するのも興味深くて面白いかもしれない。