昨日書いた原作者とドラマ化の闇についてですが

その数日前に、こんな記事が上がっていました…下矢印


『推しの子』には、正に二次創作に当たっての制作側の闇が、強烈に描かれています。

アニメ化はまだ良いんですよ…何故なら声優もアニメ製作者も、おそらくほぼ漏れなくオタだから。

表現は違っても、それぞれの愛が伝われば、解釈がちょっとくらい違っても全否定はしない。

考察も「ここはこうした方が良かったよね」「このバトルシーンはTVには合わなかったかも」なんていう、未来に向けての前向きなものである事が多いし(もちろんそうでない事も多々あるけどw)、オマージュだと思って楽しんで観ることができる(ことが多い)。

※推しの子で扱っている2.5次元については門外漢なので割愛


でもこれが実写ドラマ化となると「漫画(オタ)なんかよりTV(世の中を動かせるオレ達)の方が上!)」と信じて疑わない(しかし学生時代には決して一軍にはなれなかった屈折した)奴等(Pなど)が絡んで来たり、キャスティングありきで原作に対するリスペクトなんて微塵も感じられない、クールや時間の枠と目先の視聴率に囚われて、原作とは似ても似つかないモノが出来上がる。

横道に逸れるけど、Monster以降の浦沢直樹作品は原作が既にこの状態になっている。

演出の長崎氏に依存しすぎて、その回が盛り上がれば良いというTVドラマのような感じになってしまった。

一応期待を込めて20世紀少年までは読んだが、その後は読んでいない。

私は、彼の最高傑作は『Happy!』だったと思っている。

そもそもキャストの微妙なニュアンスが違うだけでも、ピースの形が同じなだけの全く別のパズルを嵌め込んだようなチグハグな出来になってしまうのは否めない。

漫画は一つの完成された「作品」だから、実写化で脚本家・監督・俳優の全てが足並みを揃え、しかも限られた時間内に作品世界を完璧に表現できることなんて、奇跡でも起きない限りあり得ない

そう考えてみると、漫画の実写化とはモナリザやルノアールの絵画を実写化しようとするようなものなのかもしれない。

既に完璧な、不必要な書き込みなんて点のひとつもないような作品を、(改変でなくても)わざわざ削りまくって作るモノが、原作に勝るはずもない。

そして時にはその「点ひとつ」が、ファンがその作品を強く愛する理由だったりするのだ。

だから原作を読み込めば読み込むほど、点ひとつに込められた意味に気付き、その作品を愛すれば愛するほど、実写化への不満は大きくなる。

ましてや人生を削って作品を生み出している作家さんの内心たるや、強火オタの比ではないだろう。

下矢印『推しの子』に登場する超売れっ子漫画家、アビ子先生

https://x.com/pictomancer/status/1751049842028404886?s=20


それが全く別の作品として完成度が高いものなら読者も楽しめるし不満は無いと思うのだけど、私が今まで見たことのある実写化は(ほとんど見るに耐えなくてそこで止めるので、ほとんど断片ですが)全て作者の最も大事なメッセージやキャラクター、大事なシーンが改変されているものしかなかったので、今はもう一切見ないことにしている。

(ギャグとか、そもそも実写に近い作りのアメコミみたいな作品なら違和感も少ないし、逆に原作では描かれなかった場面や細部を丁寧に描き更なる深みを持たせてくれるような映画なら、寧ろ原作の世界観を広げてくれてスケール感が出ることもあるかもしれないけど)

作者様が商業的に儲かればそれで大成功だし、作家さんにお金が入るならそれで良いと思っているけれど、端金で頬を叩かれるような仕打ちをされている(いた)ことを告白する漫画家さんが多過ぎて、実写化には不信感しかない。

「漫画は日本が世界に誇る文化」とかなんとかいう口先ばかりのお題目を唱えたって、二次創作をする側に作者に対するリスペクトが無かったら何も伝わらないどころかマイナスにしかならない。


大分前になるが、ヤマザキマリさんが『テルマエ・ロマエ』の興行収入が58億円だったのに100万円しか受け取っていない、と発言して世間を驚かせた。

マンガを読まない人は最近の映画やドラマが漫画原作だらけだということに気付いていないか気にしていない人がほとんどだと思うが、漫画原作が増えたのは「既に出版社のコンプライアンスチェックを通っているので、表現に関しては原作者と出版社の責任」という言い訳で責任転嫁できるので楽だからなのだ。

つまり漫画原作様様のはずなのだ。

にも関わらず、制作側は「タダで宣伝してやって原作漫画の売り上げ伸びるんだからありがたいと思え。細かいことでつべこべ言うな」という“上から目線”で作品への愛が(若しくは理解力が)ない。


とはいえそもそもマンガとドラマでは基本的に客層が異なるので、媒体に合わせた改変が必要なのは理解できる。

メッセージ性の高い作品を、バラエティ番組等に慣れたTVを観る層にも飽きられないように視聴率を落とさず「魅せる」には、独自の演出や技術が必要なのは当然だと思う。

その上で、今回自死してしまった原作者は条件付きで実写化を許可していたのだし、ドラマを通してその条件や原作者が視聴者に伝えたかったメッセージを黙殺してやっつけ仕事をしようとした制作側の態度については憤懣遣る方無い。

そんな相手方に対して精一杯真摯に向き合おうとなさった結果がこれだというのがあまりにもやり切れない。

「自分の手を離れたらそれはもう別の作品だから口出ししない」という作者様も多いけれど、今後は実写化に当たってはもっとしっかりと契約を交わし、条件面は書面化するという対応がベストなのだろう。







只のライトオタクの癖に分かったようなことを長々と語ってしまって申し訳ありません。

憤り、という言葉しかありません。

このような悲しい事件が二度と起きないことを強く願います。


ハートのバルーン


『推しの子』2.5次元舞台編は5〜7巻。アニメは第2期になる見込み。