コンクール、予選通過しました〜
そちらは後ほど限定記事で
今回は、7月12日に受けた特別レッスンの記録です。
前回
娘私と続けてコロナに感染してほぼ6月一杯寝込んでいたため、5月以来のレッスン記録です。
私が感染中の送迎は夫に頼んだので、レッスン記録は諦めます…
先週は娘の先生が演奏会出演のため、教室代表であるK先生のレッスンに振り替えていただきました。
見ていただいたのはコンクールの課題曲2曲です。
『シンフォニア11番』(バッハ)
・テンポは好きなように弾いて良いが、何故3/4ではなく3/8なのかというと、ダレないようにするため。あまりゆっくり弾くとロマンティックになりすぎるので、テンポは104くらいで。
・文章を読むのと同じように、段落を考える。
・出だしはmf〜mpの間くらいで。フレーズは長く取る。
・曲の中で、1番弱く弾く部分と1番弱く弾く部分を最初に決める。バッハは同じメロディを繰り返すので、同じような山がいくつもあるだけの演奏だと、砂漠の風景のようで退屈してしまう。
・1番弱く弾くのは36小節目。その次のピークが1番強い部分。
・うねりがないと着メロになってしまう。着メロと同じような演奏では人は感動しない。
使用楽譜はこちら
『森のざわめき』(リスト)
・この曲もうねりがポイント。リストもバッハと同じでうねりを出す。
・リストの師匠はツェルニーだが、ツェルニーの練習曲と違い右手の風の音に1音を混ぜたところがセンスの良さ。ツェルニーなら絶対やらない。同時に弾くと物凄い不協和音なのに、左手のメロディとのハーモニーが保たれているのが凄い。実は本当に凄い曲。
・更に左を重ねて同時に弾いてみると、とんでもない汚い音になる。何故そんな音を持ってきたかというと、そこが主張したい部分だから。
・リストが使っていたのはベーゼンドルファー。〇〇高(県内の音高)にある。今回はヤマハだから響きは違ってしまうが、リストが表現したかった音を出すことを意識して。
・これはタイトルにもある通り、「練習曲」。右手の出だしはエコーがかかるように弾く練習だし、メロディは左手の練習、ペダルの入れ方も練習。
・♯5は左手上のシの部分だけ右手のラが無い。そこは思い切り出すために不協和音を避けた部分。だからここは左手シの音を思い切り出して。♯11も同様。♯5よりももっと出して。
・ショパンは病弱で若くして亡くなり繊細だが、リストは身体も大きく力強い。75歳まで生きた。今だったら98歳くらい1885年まで生きていたので、あと2〜3年生きていれば音源が残っていたと思うと残念。(ちなみにブラームスは自演の音源が残っている。)
・これまでの進行を一旦消すために♯14のpppがある。
・♯15、右手にメロディがオクターブで出てくるのでここではガツンとやっていい。ここでショパンみたいに繊細に弾いたらちょっと気持ち悪い。
・この曲は右利きの人はみんな左手で苦労する曲なのだが、左のメロディがとても綺麗に弾けている。左手のメロディが大事な曲なのだから、自分の持ち味を生かして思い切り弾けばそれでいい。
・♯55-56がこの曲のMAX
・再現部はまたエコー。風がうねるように。
・タイトル書いてあるように、全編が「森のざわめき」書いていない部分でも常に意識して。
・もっと冒険していい。♯75fffからは小節線なんて取っ払っていい。テンポも全速力で、両手で風がビュンビュン吹いている表現を。
・少しくらい間違えてもいいから、思い切り強気で行ってみよう。
・コンクールでは、審査員は朝からずっと演奏を聴かされて短時間で講評まで書かなければならず、とても疲れている。
午後の疲れて眠い時間にダレた演奏なんて聴かされたら「この演奏はもう聞きたくない」と思われてその時点でアウト
(審査員の先生を確認して)
今回の審査員達はせっかちな人が多いから、スッキリとした演奏をした方がいい。
演奏会とコンクールは別物。
演奏会は観客のために演奏するが、コンクールは審査員の為に演奏する。審査員の好みが全て。
私はコンクールの時は、審査員全員の好みを調べてそれに合わせた演奏をしていた。
小学生にはそんなことは言わないけど、もう高2ならそれくらいのことは考えてもいい。
・〇〇先生はリスト大好き。押しを強く。
・朝ドラの福原遥はオーディションで「私を選べば絶対に後悔はさせません」と言ったそうだ。あなたも「私が選ばれて当然」くらいの気持ちで自分を主張して
使用楽譜はこちら
やっぱりK先生は、娘の本気を引き出してくださる
普段の先生のレッスンでも都度的確な指導はしていただいているのですが、なんというか情報量と熱量が違うのですよね。
30年余計に生きているのですから当然かもしれませんが、私が「何かが足りない」と感じていた最後のピースが見つかったようで、とても良くなりました
前回のコンクール前にもレッスンをお願いすれば良かったなあ…
毎週この熱量だと辛いですし練習が大変なので(最低でも今の4倍、2時間くらいは練習しないと…)、うちの娘の場合は仕上げ付近に見て頂く程度で十分ですけれどね
そしてこの曲は、元々左利きの娘にはとても合っているとのこと
初めて先生のレッスンを受けた時に、娘のちょっとした握力の違いを見抜いて「もしかして左利き」と聞かれた事を思い出します。
(「よりによって(課題曲の中で) 1番難しい曲を選んじゃったねえ」とも言われましたが)
楽曲分析も明快で面白くて。
「なるほどー」と頷く事が沢山ありました
不協和音、実際に先生が弾いてみると予想外に凄かった
(ピティナの解説には「斬新な和音」と書かれていましたが、実際に弾いてみると本当に汚い)
この不協和音が、分散和音になるとあんなに美しい響きになるというのが本当に不思議…。
不協和音にする意図が「主張したいから」というのも面白い。
表面上は美しいメロディなのですが、サブリミナル的な効果がありそう
ここからは私の勝手な解釈になりますが。
この曲はリスト50歳頃の作品ですが、私はこの曲、森に散歩に出かけた2人(リストと、後に恋人となる人妻)が恋に落ちた瞬間を表現している曲なのではないかと思っています。
先生が仰る「強い風が吹き荒れる部分」では、荒れ狂う恋の嵐の渦に否応なしに巻き込まれていく2人の姿が目に浮かぶようで、とても説得力がありました
リスト50歳、実は恋の終わりを迎える前後。
・36歳の時に人妻と本気の恋に落ちて同棲
・15年も待ってやっと教会から離婚(婚姻無効)の許可を得られる
・いざ彼女と結婚しようとしたら結婚式の直前に前夫からの横槍で結婚できなくなってしまう
・以後は失意の余り(仏教で言うと在家出家のような形?で)教会の僧侶となり、独身のまま75歳で生涯を終える。
超大雑把に言うとこんな感じなのですが、こちらの解説ページが滅茶苦茶面白かったので是非
こんな解釈は探しても見当たらなかったのですけれど(そもそも他の曲と比べるとマイナーな曲ですしね)…何度も聴いているうちにハッと気付いたのです。
「私この感情、知ってる…」と。
木々のざわめき、所々で響く鳥の鳴き声、交わされる男女2人の会話。
初めは上品に穏やかに、徐々に親密に、そして情熱的な激しさに変わり、最後はこの上なく甘く(dolcissimo)…
クライマックスで吹き荒れる強い風は、駄目だと分かっていても止められない激情。
こんなの、ただの風のわけがないじゃないですか
技巧的には洗練され、表面上は美しい響きを聴かせながら、そこに隠された秘密の1音。
50歳の作とは思えない若々しさや激しさは、結婚という形で終えることができなかった15年間の恋を、作品として昇華させた曲なのかもしれません。
もちろんリスト亡き今、彼の意図を知ることはできませんし、どう解釈し表現するかは弾く人の自由。
けれど、作者しか知らないだけで、答えは確かにあったはずです。
小説と同じで、直接的な表現をしていなくても、小説であれば暗喩、音楽であれば隠された音に、様々な感情が隠されている。
当然、受け手側が知らなければ気付けない感情(表現)もあると思うのですが、これがなんと、自分が若かりし頃に恋に落ちた時の心象にそっくりだったのですよ
だから私にはもうそういう曲にしか聴こえないし、誰が何と言おうとそういう曲だったのだと思っています
今回の演奏は、私としては娘の力の85%くらいしか出せていなかったと思うのですが(奇しくも点数の平均は86点でしたお一人はなんと90点以上付けてくださいました)、本選では100%出せる事を願っています。
厳しい方の講評には「テクニックはあるがもう少し表現に工夫を」とアドバイスがありましたが、テクニックももう少しブラッシュアップして、余裕が欲しいところです。
参加者は音高生が多かったようですが、皆さん完成度が6〜7割といった感じ。
もちろん並行して他の曲も練習しているので大変なのだと思いますが、まさか娘が毎日僅か30分の練習でこの曲を弾いているとは誰も思うまい…
勉強と同じでピアノも「最小限の努力」ですが、私と違って「最低限の結果」ではない所が凄いわ
緊張で気持ちが昂っていたのか、昨夜?は朝5時まで眠れませんでした
(娘はぐっすり)
首〜背中〜腰まで引き攣っている感じ
夜眠れなくなりそうなので5時間弱寝て10時前に起きましたが、体調が整うまでしばらくかかりそうです
でも前回のコンクールでは予選落ちだったので、ホッとしました
それではまた