とりあえず、まずはギルドに向かった。
ギルドはいつも通り騒がしく、ルーが入ると何人かがこちらを見るがルーだとわかると興味を失ったのかすぐに周りと話し出す。
「…んと…あ、いた」
ルーの目的の人物は隅のテーブルで黙々と何かの書類を確認していた。
だがルーはそれらを見たりはしない。
大事な書類で、極秘のものもある。あと、こう、個人的なものの時もあるので見てはいけないらしい。
「カルモ―」
ルーは少し離れた場所から声をかけてみる。
すると、基本は怖がられる容姿の彼はふとルーの方に視線をよこす。
「……」
無言でルーを手招きする。ルーはそのままカルモの側に行くとテーブルの上に子犬の入った袋を乗せ、袋から完全に出さずにカルモに見せた。
「新しく拾ったのか?」
「んーん、ルーの子犬だよ」
「そうか」
子犬は目の前の男を見て、若干ぽかんとしたのちじっと見つめている。
カルモはそんな子犬に柔らかめの干し肉を与えると、ルーの方を見た。
「何か悩みか?」
「抜け毛がすごいの、前の子よりすごいの」
「…個体にもよる…こいつは、短毛種だ…」
ルーは短毛種という言葉を初めて聞いた。首をかしげているとカルモは、小さな声だがルーにわかりやすいように教えてくれた。
「あと、こいつはたぶん、毛が短いが毛の量は多い…ふかふかしているように感じるのはそのせいだ…」
「…ほー」
「なので、見た目以上に毛が抜ける」
「…抜け毛が散らばるの…」
しょんぼりと悩み事を言うと、カルモは考える。
考えた後、若干困った顔でルーの顔を見つめた。
「方法は、二つある」
「ん?」
「1つは、こまめにブラシをかけてやれ」
「ブラシ?……髪とかとかすあれ?」
「そうだ」
「もう一つは?」
「洗う方法だ…が…今の時期だと風邪をひく」
ルーを指さしながら言うと、ルーは悩んだ表情を見せる。
ルーはブラシを持っていない、つまり買うしかない。
風邪もひきたくないとしたら、洗う方法は論外になる。
「ブラシかぁ…」
「馬を扱う場所には色々なものがある…試すといいかもしれない…」
ちなみに、ルーは馬に近寄ることはあまりない。
むしろ、近づくと怒られるので馬の様子を観察したことはない。
だが、カルモの言葉に、しばし考えるとルーは知り合いの人間で馬を駆っている人間がいないかを考えだした。