廃墟の中のエル
~扉の開く音。
「お父様・・お父様なの・・・?」
朽ちゆく廃墟に血塗れの仮面の男が入っていく。
真っ白な髪、伸ばしたままの無精髭、最早ただ纏わりついているだけにしか見えない血で薄汚れた黒いマント。
「やっと逢えたね、私のエル」
「パパ・・パパ・・・逢いたかった・・・ずっとずっと、待ってたよ、私、いい子で待ってたよ・・・」
人形の様な表情の白髪の少女の顔が緩む。
元から紅い瞳からは綺麗な涙が零れ落ちる。
「もう泣かないでエル。私は楽園への切符を遂に手に入れたよ。だから私は此処に来ることが出来たんだ。」
「じゃあ、ずっと一緒にいられるの?この楽園ではどんな花が咲くの?身体はもう痛くないの?」
「ああ、もちろんずっと一緒さ。あの窓を見て御覧。とても奇麗な花だろう?この楽園では身体ももう痛くないんだよ。 ああ、私のエル・・・笑っておくれ・・・」
「嬉しいよ、私とても嬉しいよ。ありがとうパパ、パパ・・・」
そして朽ちゆく廃墟の中、仮面の男は白髪の少女を抱き上げた。
その瞬間、少女の身体は人形の様に音を立てて崩れていく。
そして、朽ち果てた廃墟に二つの哀れな骸が寄り添いあって果てていた。
不思議と、その親子は安らかな笑顔だった~
word by ruine tanatos
story voice by kokoro ichinose
vocal&gt&mix by ruine tanatos
photo design by kokoro ichinose