長門有希の生活と意見 | 長門有希の失望

長門有希の生活と意見

 わたしは三年間対象である「涼宮ハルヒ」を観察し、記録してきた。
なぜならそれがわたしに与えられた唯一無二の存在理由だから……。

全宇宙をくまなく網羅する「統合情報思念体」によって造られた対有機生命体用ヒューマノイド・インターフェイスそれがわたし長門有希……。

 コンビニで買ってきたシャケ弁を食べ、朝日奈みくるから貰った静岡の銘茶「カリガネ」を啜りながら、想いは漆黒の宇宙に漂う。

 わたしを生み、育てたモノたちは、わたしの存在を知覚し、ゆりかごのように愛撫する。
長門有希の失望


 無意味な思念の羅列、全宇宙を凌駕する情報という実体のない洪水の果てで、わたしは何を見、何を成し遂げられるのだろうか……。

 虚しさだけがさまよい、まるで生きた化石のように宇宙は無限の混沌の中で、わたしをいざなう。

 一億年も百億年も概念は同じ。脆弱な有機生命体にとっては、千年ですら無限に等しい。
 千年先に人はその存在すら証明することはできない。それと同じ意味で、その先を視覚することもできはしない。なぜなら人は死をもってその存在を抹消スルから……。

 しかし、その線香花火のような一瞬の生だからこそ、類まれなる美しさを放つ……人とはまさに全宇宙に匹敵するほどの神秘でわたしを捕らえる。
 まさに、蛍のように儚き生……だからわたしは観察対象H-001001「涼宮ハルヒ」のそばでこれからもその記録をとりつづける。

 わたしがわたしであるために……。


    宇宙歴  :XX012698年
    観察対象:涼宮ハルヒ
    Observer:長門有希