中絶問題の話を聞くたびに思い出すのがケイトのこと。彼女は夫の元同僚の奥さんで、17歳のときに妊娠した。熱心なカトリックの家庭で育ち、中絶するという選択は与えられなかった。生まれた子どもは養子に出す予定だったが、お腹が大きくなるにつれて自分で育てたいという思いが強くなり、自分とボーイフレンド(現夫)の家族の支援を受けながら息子を育てることにしたらしい。
彼女の場合、自身もボーイフレンドも比較的裕福な家庭で育ったため十分な支援を受けることができたが、家族の助けが得られなかったら相当大変だっただろうと思う。その後ボーイフレンドと結婚し、彼は大学に通い、その間彼女は子育てに専念した。彼女は高校での成績も良かったようで、言葉の端々に「私は高卒の専業主婦で終わるような人間ではなかった」というのが滲み出ていた。他州に引っ越してから彼女と交流はなくなってしまったけど、その後さらに2人の子どもができたらしい。なれたかもしれない自分と、若くして専業主婦になった自分に上手く折り合いを付けられただろうか。
通っていた私立のカトリックの学校は性教育をろくにせず、妊娠したら中絶することもできない状況に理不尽さを覚えた彼女は反カトリックになった。宗教そのものを否定するわけではないけれど、考え方が馬鹿馬鹿しいと思ったらしい。なんでも彼女の2人の姉は、コンドームは使ってもいいけど避妊ピルは体の自然なシステムを改造するものだから使ってはいけないという考え方で、理解できないと言っていた。
ピルを飲んではいけず、中絶も駄目。これだと男性側がきちんと避妊しなかったら明らかに女性が詰むじゃん...。たとえ中絶が合法でも、文化的に性教育をきちんと受けられず、中絶が許されない女性も一定数いる。アメリカの中絶問題って根深いわ。