仕事で書く文章はほとんどメールで送るようになり、誰が誰に送るのか、誰の立場で書いて誰に読まれるのか、というところが出発点になった。自分で書いて別の人の代理として送る、上向き、横向き、下向きに送る、バタバタしていると、うっかり上向きに送るのに書き方が横向き、下向きだったりしてダメ出しを食らう。

 

 方向転換するか、スタート地点に戻るかで、スタート地点を選んだ。基礎は固ければ固いほうが良い。テクニカル・ライティングはいったん捨てる。

 

 38年前の本だが、以下に抜粋したところはまったく古くなく、然り然りである。

 

 図1データの分類法のところでリンクを張った先に図を横書きで再現している。右端でA、B、C、D、Eそれぞれの塊が横一列に並んでいるが、実際に打ち合わせをしたときの手控えを文章にまとめるときは、横一列のそれぞれをさらに編集し、順番を入れ替えたりする。

 

 

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課題→仕事(研究)→報告→対象→行動

 

 実用文を書く人には、まず、課題が与えられる。これを分析して、目的を理解したうえで仕事か研究にとりかかるか、相手に仕事か研究を依頼する。②の段階が終わると、その内容を文章にまとめるわけだが、ここで、報告文か説得文かを決め、読み手を分析し、対象を明確にし、読手の反応を考えてみる。読み手に何かの行動を期待しなければならないので、何をどのように分析し、どのように説明すべきかという問題と、どのデータを書くべきかという取捨選択の問題が起こる。読む相手を常に考えて書かねばならないので、実用的な文は「自分の云いたいことを、出来るだけその通りに伝える」わけにも行かないのである。

 

 自分の考えや意見あるいは経験を表わす情報を、読む対象に提供する文章をさすことにする。読む対象を意識し、理解しないで書く文章は実用文とはいえないだろう。

 

図1 データの分類法

https://drive.google.com/file/d/1kXOAgJq7Gi1_NbLAXyIlRor_0vw8YdAo/view?usp=share_link

 

 われわれの頭の中では、データ[各論〕から要約〔総論〕へと展開しているものを、報る段とか、文章にまとめる段では、逆に、総論から各論へと方向を変えなければならないために、行ってきた仕事の内容よりも、聞き手や読み手に目を向けるべきだ。

 

 実用文では、目的を述べることを第一要件と思ったほうがよい。実用文では、目的を明示しないと、読み手は最後まで読んでも書き手が何をして、何について書いたのかが理解できないので、読み手に迷惑をかけることになる。情報化時代のドキュメントは、その種類を問わず、ドキュメントの目的とするところを、第一パラグラフで明示するがよい。これを怠ると、書き手も自分で書いたドキュメントの内容が理解できないことがある。目的を書かない人は文書やレポートを書く適任者とはいえない。

 目的を明示しなければ、文書やレポートを作成した人は賭をしているようなもので、読み手は、書き手の意図していることを的確に理解できないときがある。読み手の心の状態や環境も様々である。慎重に読む人もいれば、急いで読む人もいる。机の上で読む人もいれば、現場で仕事をしながら読む人もいるだろう。書かれている分野に精通している人もいれば、そうでない人もいるはずだ。読み手が、書き手と同程度の知識を持っているとは限らず、一語一語を注意して読むとも限らない。読み手に、書き手の意図していることを完全に理解してもらいたいならば、その目的を簡潔で明確に表示することを忘れてはならない。

 まず、問題点から述べ、それを技術上の目的、さらには、伝達の目的へと展開させて行くことだ。

 

 企業や組織体が活動していれば、そこには常に何かの問題が存在しているはずである。また、技術者が何かの仕事をしていれば、そこには常に何かの問題が存在しているはずである。そして、その問題に関心を抱いている人がいれば、その人にその問題を伝えねばならない。ここに書き手の仕事が生まれる。そこで、読み手に問題点を早く、正確に知らせてやれば、読み手はそれだけ早く理解できることになる。目的や問題点がなかったり、不明確だと読み手は最初から反感を抱くことになるので、そのレポートなり報告書の価値がなくなる結果を招く。

 

 問題点が把握できたら、次に書くことは技術上の目的である。技術上の目的とは、書き手が何をしたか、何を行うべきかを書くのだから、書き手にはわかりすぎるほどわかりきっているが、読み手にはわからない場合が多いので、読み手をよく考え、読み手が容易に理解できるように書くことを第一の要件としなければならない。もし仕事の指示者がいれば、誰が何を指示したかを明記する必要がある。

 

 いかなる文書でも、レポートでも、何故書くのか、つまり、書く理由を述べなければ読み手はそれを推測しなければならない。

 問題点と技術上の目的を説明した直後に伝達の目的を述べると効果がある。読み手は、問題と課題を初めに知っていれば、レポートを書くに至った理由が容易にわかるからだ。どこで伝達の目的を述べるかは、書き手の判断に委ねられるが、問題点の後、つまり、最初のパラグラフの最後の文が効果的だろう。

 伝達目的が書いてあることを読み手にわからせるには二通りある。一つは、主題で「目的」と書いて、次に、タイトルを書くようにその目的を述べればよい。もう一つの方法は「本レポート(の目的)は…….である」のように書くことである。見出しに書いたことを繰り返してもよい。読み手が伝達の目的を理解してくれなければ、レポートの価値がなくなるからだ。

 

 目的を書かなくてすむ場合がある。それは、読み手が問題点や仕事の内容に熟知しているときである。しかし、これも技術上の目的だけであって、伝達の目的は書くほうがよい。でも、このレポートが後日どのような使い方をされるかがわからないので、目的を省略するのは、ごく限られた場合だけだと思うのが賢明だろう。次に技術上の目的に続く伝達の目的をそれぞれ示す。