今月は、6月30日放送、第26回「いけにえの姫」から先週7月28日放送、第29回「母として」までの感想です。

 

今月の放送で多くの視聴者が注目したのは、まひろ(紫式部)が藤原道長と石山寺で再開した折の逢瀬で、まひろが道長の子を身ごもり、女の子を出産したことでしょう。まひろと道長の相思相愛がこの物語の重要な柱です。この展開は予想できるものでした。

 

今月も、まひろ側ではまひろ側の、宮中側では宮中側の状況を映すことで、今後、まひろが宮中に出仕して源氏物語を執筆する事情を準備する物語でしたね。

 

まず、まひろ側。藤原宣孝との結婚後の生活が描かれました。宣孝の一言に、ついかっとなったまひろや、たとえ道長の子でも自分たちの子と諭す宣孝など、夫婦でなければ描けないシーンが印象的でした。さらに、生まれた賢子にまひろが『蒙求』(もうぎゅう、中国の故事集)を読み聞かすところなど、源倫子(黒木華さん)や源明子(瀧内公美さん)に通じるように、母の子供に対する教育の熱心さが面白かったです。

 

そんなまひろも夫、宣孝の急死により、幼い賢子と母娘ふたりきり、しかも父、藤原為時も無官となり、生活的には寂しいものがあったのでしょう。先週の番組最後のシーンでは、まひろがいよいよ物語を書き始めるシーンが映し出されていました。

 

一方の宮中側もゆっくりと物語が進行しています。その進行の仕方は、歴史的事実になぞらえながら、かつ、近い将来、まひろが宮中で源氏物語を書いていく舞台も準備しているようです。

 

今月も大切なキャストが退場しました。中宮定子(高畑充希さん)と藤原詮子(吉田羊さん)です。

 

中宮定子は政治的な流れで悲運に見舞われながらも、定子自身に卓越した魅力があったからこそ、一条天皇や清少納言といった人たちからの愛情を受けることができました。

一方、藤原詮子も政治の荒波の中で、こちらはその荒波に向かっていくような女性でありました。

この二人の女性から大きな影響を受けた二人の男性、中宮定子は一条天皇、藤原詮子は藤原道長は、今後の物語でどのような変化をしていくのでしょうか?

 

いずれにしても、登場人物のひとりひとりがお互いに影響しあって、それが次の物語に発展していくのは、観ている私たち視聴者も、その緻密さがとても楽しみです。

 

最後に、今月、父藤原道長の「仰せのままに」入内し、かつ、伯母藤原詮子や安倍晴明のアドバイスで中宮として立后した藤原彰子(見上愛さん)。まだセリフは少なく、しかも何をどのように話したらわからないような少女を演じていますが、一条天皇の笛の音に

「笛は聴くもので、観るものではございません。」

と言った彰子に、只者ではない片鱗が見え、8月以降も私にとって最も注目しているキャストであります。