もしかしたら、実話になるかもしれない作り話 第2話 ⑤
連邦裁判所の法廷は、部屋の中心にテーブルが置かれ、その横には大きなテレビ画面が置かれていた。テーブルには2人の裁判官が席についていて、その向かい側に被告人が席についていた。被告人の席には仕切りがあり、被告人の顔は裁判官の席からしか見えないようになっていた。
裁判官(男):「それでは裁判を始めたいと思います。被告人の罪は、今年4月に被告人が勤務していた病院で当時措置入院していた35歳の男性患者を安楽死させた殺人罪ですが、これは間違いありませんか?」
緒方(被告):「はい。間違いありません。被害者を安楽死させたのは私です。」
安藤:「ええっ!安楽死って殺人になるの?」
笹川:「日本じゃまだ認められてないんだよ。」
裁判官(女):「安楽死が殺人になることは知っていますよね。」
緒方:「はい、知っています。」
裁判官(男):「ではなぜ、被害者を殺害したのですか?」
緒方:「このまま被害者の治療を続けるのは、被害者には残酷だと思えたからです。被害者は事件を起こしてしまった事と、多重人格障害を患っていた事もあり、安楽死を希望していたんです。ですから治療はなかなか進まず、正直苦労していました。」
平川:「先生、僕を安楽死させてください。」
緒方:「何をばかなことを言っているんだ。病院というところは人の命を助けるところであって、人を死なせるところじゃないんだよ。」
平川:「先生は、僕がここに来た理由を知っているでしょ?僕は家族全員を惨殺した凶悪犯ですよ。たとえ治療を終えたとしても、僕は刑務所に入らなけらばならない。それならいっそのこと・・・・」
緒方:「そんな考え方をするのはやめなさい。事件を起こしたのはいちばん凶暴な人格「ビル」がやったことじゃないか。君のせいじゃない。」
平川:「それはわかっています。でも、次にまた「ビル」が出てきたら、取り返しのつかないことになる。早く僕を安楽死させてください。」
緒方:「毎日、こんなやり取りでした。そんな時にまた事件が起きてしまったんです。」
裁判官(男):「その時の状況を説明してもらえますか。」
緒方:「はい。あの日も私は被害者の治療をしていました。そのときにまた、被害者に「ビル」の人格が現れ、暴れだしたんです。私は突き飛ばされ気を失っていたようですが、駆け付けた看護師に起こされ、診察室を見ると、被害者の姿はありませんでした。私は、最悪の事態が起きたと思い、あわてて廊下に出ました。」