夏以来ずっとシゴトの日々である。
今だ自らが何者なのかも解らぬこの愚人が
「イソガシイ」
と言える程に頼み事をしていただけるのは本当に有難い事だ。
という訳で仕事先から久しぶりの自宅に戻り、出張生活で溜まった洗濯物を干してふと周りを見やれば、畑にはコスモス達が揺れ、それをヒガンバナが赤く縁取り、やわらかく乾いた風はキンモクセイの香りを運んで来る。
「なんと素敵な季節なのだろう、秋とは」
と呟いた僕の目線の先には久しぶりに風を通してもらった掘っ立てガレージが有り、中にはブレーキ修理をしたまま仕舞いっ放しのモンテッサが在る。
山へ行ってはならぬ理由はひとつしかないが、行かねばならぬ理由は山ほど有る。
とは聴くに飽いたイイワケと知りつつも、ともあれ僕はこの心地よい風が逃げて行ってしまわぬうちに大慌ての準備を済ませ、山へと走り出した。
すぐ近所の山へ行くので、走る道はどれも見慣れた田舎道である。
いつもであればその景色にあくびが張り付いてしまいそうな程なのだが、真っ当に仕事をこなしている自分には(シツコイ?)、見えぬ筈の空気の色までもがきらきらと光り輝いて見える。
道はやがてダートになって勾配を増し、先の台風の仕業であろう倒木を越えると、ヘアピンカーブにたどり着く。
そのヘアピンのイン側は、近年の工事で地山が削られその名残も薄いが、僕の見当には自分が住む谷を東西に隔てている大きな尾根に通じる古い小径が隠れていると推っし、かねてからトライしてみようと思っていたのだ。
削られた地山はステアケースとなり、トラテクを持ち合わせていないトラ乗りを阻んだ。

トラテクは無いが、ロープと滑車は持っていた。
が、数回のトライでこの地形でこの方法では二人以上で取り掛からないと登れないと判断。

乗って登るウデも無く、引っ張り上げる腕力も至らぬと悟ったところで他の方法へ逃げることにした。

とりあえず厄介な岩部分を登るには登った。

何かを間違えるとすぐさま振り出しに戻りそうな地形なので、ロープでアンカーをとりつつ引っ張り上げる。


時々訪れる、とある節目節目に、
「オレは一人、近所の山でナニをやっているのだろうか」
と常人に還りかけるが、その問い掛けには愛想をしないと心に誓ってこの愚行を続け、挙句の果てにリヤフェンダーを蔑ろにする。

「FMXみたいでカッコいーでないの、」
と嫌がるモンテッサをなだめすかして尚も登り続けていたら、切り株にそそのかされたチェーンが軌道を外れ、
「もうゼッタイに仕事しません」
とフロントスプロケで大きく正座してしまった。

良く見れば正座どころか、ロメロスペシャルでガッチリと二重にフォールされていて一瞬途方に暮れかけたものの、クリップを外して持てる工具と持てる知恵を最大限に振り絞ってなんとか解除した。

常識的な判断で言えばここで引き返すのが正しかろうが、痕跡の薄いトレールは続いている。
どうでも良いことにコダワル性が災いし、なおも孤軍進軍を続けついに尾根道に辿り着くが、長くトラクションの悪いヒルクライムが行く手を阻んだ。

策を変えつつの幾度にもわたるトライでも登頂叶わず、潔く自らのアシで残りのヒルクライムを登り、潔く周辺探索をし、潔く地団駄を踏み鳴らし、潔くその場にヘタリ込み、やたら長く意味の無い休憩などして後ろ髪を千切れんばかりに引きずりながらバイクに戻り、往路の数分の一の時間で山を駆け下りたのだが…
行きに登ったステアは帰り道に下りなくてはならない、と言うことをすっかり忘れている自分がそこに居たのであった。

今だ自らが何者なのかも解らぬこの愚人が
「イソガシイ」
と言える程に頼み事をしていただけるのは本当に有難い事だ。
という訳で仕事先から久しぶりの自宅に戻り、出張生活で溜まった洗濯物を干してふと周りを見やれば、畑にはコスモス達が揺れ、それをヒガンバナが赤く縁取り、やわらかく乾いた風はキンモクセイの香りを運んで来る。
「なんと素敵な季節なのだろう、秋とは」
と呟いた僕の目線の先には久しぶりに風を通してもらった掘っ立てガレージが有り、中にはブレーキ修理をしたまま仕舞いっ放しのモンテッサが在る。
山へ行ってはならぬ理由はひとつしかないが、行かねばならぬ理由は山ほど有る。
とは聴くに飽いたイイワケと知りつつも、ともあれ僕はこの心地よい風が逃げて行ってしまわぬうちに大慌ての準備を済ませ、山へと走り出した。
すぐ近所の山へ行くので、走る道はどれも見慣れた田舎道である。
いつもであればその景色にあくびが張り付いてしまいそうな程なのだが、真っ当に仕事をこなしている自分には(シツコイ?)、見えぬ筈の空気の色までもがきらきらと光り輝いて見える。
道はやがてダートになって勾配を増し、先の台風の仕業であろう倒木を越えると、ヘアピンカーブにたどり着く。
そのヘアピンのイン側は、近年の工事で地山が削られその名残も薄いが、僕の見当には自分が住む谷を東西に隔てている大きな尾根に通じる古い小径が隠れていると推っし、かねてからトライしてみようと思っていたのだ。
削られた地山はステアケースとなり、トラテクを持ち合わせていないトラ乗りを阻んだ。

トラテクは無いが、ロープと滑車は持っていた。
が、数回のトライでこの地形でこの方法では二人以上で取り掛からないと登れないと判断。

乗って登るウデも無く、引っ張り上げる腕力も至らぬと悟ったところで他の方法へ逃げることにした。

とりあえず厄介な岩部分を登るには登った。

何かを間違えるとすぐさま振り出しに戻りそうな地形なので、ロープでアンカーをとりつつ引っ張り上げる。


時々訪れる、とある節目節目に、
「オレは一人、近所の山でナニをやっているのだろうか」
と常人に還りかけるが、その問い掛けには愛想をしないと心に誓ってこの愚行を続け、挙句の果てにリヤフェンダーを蔑ろにする。

「FMXみたいでカッコいーでないの、」
と嫌がるモンテッサをなだめすかして尚も登り続けていたら、切り株にそそのかされたチェーンが軌道を外れ、
「もうゼッタイに仕事しません」
とフロントスプロケで大きく正座してしまった。

良く見れば正座どころか、ロメロスペシャルでガッチリと二重にフォールされていて一瞬途方に暮れかけたものの、クリップを外して持てる工具と持てる知恵を最大限に振り絞ってなんとか解除した。

常識的な判断で言えばここで引き返すのが正しかろうが、痕跡の薄いトレールは続いている。
どうでも良いことにコダワル性が災いし、なおも孤軍進軍を続けついに尾根道に辿り着くが、長くトラクションの悪いヒルクライムが行く手を阻んだ。

策を変えつつの幾度にもわたるトライでも登頂叶わず、潔く自らのアシで残りのヒルクライムを登り、潔く周辺探索をし、潔く地団駄を踏み鳴らし、潔くその場にヘタリ込み、やたら長く意味の無い休憩などして後ろ髪を千切れんばかりに引きずりながらバイクに戻り、往路の数分の一の時間で山を駆け下りたのだが…
行きに登ったステアは帰り道に下りなくてはならない、と言うことをすっかり忘れている自分がそこに居たのであった。
