実技試験会場は大阪梅田スカイビル。

クリスマスを控えた試験当日、ビルの谷間には巨大ツリーや出店が出現し、山に囲まれた田舎からやってきた僕はビルに囲まれて、すっかりおのぼりさんマインドで、高いビルを見上げスマホ撮影な試験前であった。




いろいろタイヘンだったけどたどり着いた試験会場。




当たり前だがとてつもない数のヒトタチがやってきていて、当たり前だが今回もまた老若男女、一見すると何の集まりだか分からない。

自分の席を見つけ早速、複線図(結線箇所を明確にする為の図面)の復習を始めつつ、ふと目をあげるとスラリとした若い女性が使い古した工具箱をぶら下げ会場に現れた。

反射的に「オレの隣の席に座れ~」と念じたものの、彼女は数列離れた席に行ってしまい、代わりに僕の右隣に座ったのは、一見してマットウな生き方とはチョイと外れた感じのチョイ悪オヤジであった。

そんなこんな、回りの景色に邪魔され(勝手に)つつ複線図の復習に勤しんでいる横で、となりのチョイ悪オヤジは席に座るなり、

「めんどくせェ」

と言わんばかりに寝てしまった。

さすがチョイ悪は試験直前にもハラが座っているのである。


その間にも会場にはどんどん受験者がやってきて、机の上に自分の工具を並べ始めたりしている。

多くの受験者がホーザンの電工2種技能受験者お勧め工具セットの工具袋から、汚れの無い黄色がまぶしい圧着ペンチと、工作時間短縮には圧倒的に有利な電線ストリッパーを取り出し並べている中、その喧騒に目が覚めたらしい右隣のチョイ悪オヤジだけはスーパーの買い物袋から、面倒くさそうにごそごそと使い古された圧着ペンチ、電工ペンチ、ラチェットドライバー、そして電工ナイフを取り出したのである。


「おおお!!」


僕は感激してしまった。


僕も最初はカッコつけて電工ナイフでの線剥きを練習をしたものの(ナイフをくるりと回すしぐさがとてもカッコいいのだ)、電工ナイフでの線剥きはあまりに時間が掛かって不利なので直ぐに止め、一発剥きが出来るVVFストリッパーを使うという堕落に甘んじたのである(オークションのセットに2つも入っていた)。

僕は隣のオヤジをチョイ悪から、かなり”イケてるオヤジ”へと昇格させ、僕の右前の席に座ったパックン(握っただけで電線被覆に切れ目を入れ、さらには剥きまでしてくれる超便利工具)を取り出した、いかにも地味そうなオヤジには、有無を言わさず即座に”ダメおやじ”のレッテルを貼った。


そうこうしている間に試験前の説明が始まりマークシートが配られた所で、通路を挟んだ左隣のお兄ちゃんが、

「あのう…鉛筆持ってきてないんスけど、」

と試験官を呼んだ。


「こいつはダメだ。」


というワケで僕は結局試験直前の貴重な時間を、ほぼマンウォッチングで過ごしたのであった。