整備は終わり、軽自動車協会に車検の予約を入れようと予約状況を見てみると、構造変更は通常の継続検査とは予約枠が異なるらしく、一週間程先になってしまった。

整備は完璧だったが、たまたま遊びに来た仲間に灯火類の点検を手伝って貰うと、ハイマウントストップランプの4つ有る球の一つが切れている、と教えてくれた。

 

僕は運転席から降り、おもむろにテールゲートを「ドン!」と叩くとランプは全て点いた。

 

「おおー!」

 

仲間は驚きと尊敬(きっと)の混じった声を揚げ、それに返す僕の無言のサムアップ👍を以て点検作業は終了した。

 

 

このミニカを買って先ず交換したのがショックアブソーバーだ。交換した社外品はそんなに高いものでは無いが、フワフワだった挙動は見事に安定し、コーナーが楽しくなった。それから10万キロを走ったが、そのフィーリングは今も変わっていない。

ミニカに乗り続けている大きな理由のひとつが、このショックアブソーバーだと思う。

 

 

一週間が経ち、軽自動車協会にやってきた。

バイクに乗り始めた16歳の時から、こういった車バイクに関わる手続きをいつも自分でやって来たが、今だにその流れというか、仕組みが理解できていない。

なので今は直ぐ窓口の人に尋ねるようにしている。それがいちばん間違い無い。

 

軽協会に着くやいなや早速窓口の人に尋ねたら、

「あちらの窓口でどうぞ」

と、違う窓口を案内された。窓口が違ったらしい。

もう早速間違ってしまった。

 

それにしても昨今の軽協会及び陸運支局の対応は、目を見張る改善がある。

僕が高校生だった35年前、自動二輪の名義変更に訪れた時の陸運支局のオッサンは、書き方が分からず空欄の有るまま恐る恐る提出した僕の書類を一瞥すると、大きな舌打ちをし、おもむろに書類をつまみ上げ、他の来訪者にも見えるよう頭の上にひらひらとかざし大声で、

 

「ほら、これ見てください!、この人(僕のこと)こんだけしか書いてないのに書類出して来てるんですよ、信じられませんねー!」

 

と、信じられないような事を言った。

思い起こせば、その頃景気は異常な膨らみを見せており、民間企業が大きな収益を上げ社員も恩恵を受けている中、公務員の給料は民間企業に比べまだまだ低かったのだろうと思う。

さらに思い起こしてみれば、僕が書類を出した時間が窓口の閉まる5分前だったような気もするが、まあそれは関係ないだろう。

 

と言うわけで無事に書類も用意出来て、検査ライン待ちの列に並ぶ。

先ずは継続検査のラインで一通り合格してから構造変更の検査ラインに行くとのこと。

 

自分の順番がやってきて、若い検査官がエンジンや車体の番号、灯火類なんかのチェックを始めた。

車体の後ろに回って検査をしている検査官から、

「ハイマウントが一個切れてます」

と言われ、慌てて運転席から降りリヤゲートをバンバンぶっ叩いたが全く復活せず、再検査項目となってしまった。

 

そのあたりからなんとなく暗雲が立ち込め、気が付いたらヘッドライト検査で左右共に✖をいただき、検査官からは、

「光量が半分も出ていません」

と言われてしまう始末。

 

この時点で本日の検査終了時間まであと1時間ちょっとであり、慌ててホームセンターへ駆け込んだ。

 

ヘッドライトのH4バルブは、運よく昔ながらの色の付いていない(青くない)タイプを見つけることが出来、ハイマウントの小さなバルブも、明るさが4分の1程度の物しか無かったものの、明るさを揃える意味で4個買った。

どちらのバルブも棚にある最後の物だったようで、今時フィラメントの電球を探し求めるという時代遅れの諸行に、世の流れとの乖離を突き付けられるのであった。

 

ヘッドライトはバルブを交換したが、まだかなり暗かった。

これは劣化の進んだレンズの曇りや汚れが大きく影響しているのは明らかである。

タイムリミットが迫り悶絶しつつ思いついたのは、鞄に携帯していた「サラテクト」であった。

 

多分5年以上前、島キャンプ暮らしの際に買ったものである。

 

 

ライトレンズにサラテクトを噴霧しティッシュペーパーでこすると、蚊よけ成分であるディートの樹脂を溶かす作用によって、レンズの黄ばみと曇りがどんどん取れていく。

 

ダッシュで検査ラインに戻って再度検査を受けると、ハイマウントはOK、ヘッドライトは何度も測り直して貰ってOKがでた。

 

次は構造変更である。

直ぐに測定ラインに移動し中の荷物を全て出し車体寸法、重量等を測定してもらう。

今回の構造変更は乗用車を貨物車にする為で、貨物車で必要な荷台寸法などの要件を満たしていなければならない(ミニカの場合、リヤシートを外せば荷台寸法0.8㎡が余裕で確保できる。)

 

若い検査官が測定した重量から、最大積載量をその場で算出してくれている。

 

検査官:「時間が掛かってしまっていてすみません。」

僕:「こちらこそ遅い時間にややこしいのを持ち込んですみません。」

検査官:「もう少しで終わると思います、すみません。」

僕:「こちらこそすみません…」

 

何故だかお互い謝り合いながら測定が終わった。

最大積載量は200キロとのことだった。

 

閉館ギリギリで4ナンバーをゲットした。

※画像加工してます

 

かくして20万キロミニカの整備及び車検及び構造変更が無事終わった訳だが、このミニカの大物コンポーネントであるエンジンやミッションの無整備寿命は、おおよそ30万キロぐらいだろうと予想している。

 

もし32万キロ走ればそれは地球8周分に相当する距離であり、そして現在20万キロを走っているミニカにとってあと地球を3周出来るというわけだ。

 

長女夫婦がこの小さなミニカで様々な情景を巡りつつこの星のどこかをどんどん走っていく。そんな想像をしながら整備をするのは楽しい作業であった。

 

そしてまたまた気が付いてしまったのが、五十路の僕は丁度このミニカと同じぐらいの齢だったということである。


やりたい事は以前と変わらず山のように有るものの、昨年から何かと体調を崩す事が増え、その都度今までには無かった不安と焦燥に駆られてしまう。

 

あと3周。

 

長持ちを心掛けそっと走るか、ここに来て意味不明のフルスロットルをキメて骨まで燃やしてしまうか。

 

 

「楽しむこと」が最優先に選択出来ていれば、僕はどちらでも構わないと思っている。