こんばんは。
続きものを書いている途中ですが、
おセンチブログを1つ、挟ませて下さい。
これも実話です。
中学の時、少しだけ付き合った女の子が
本当の初恋相手だった。
頭が良くて気配りができて、
洋楽が好きな女の子。
確か一人っ子だった。
秋になる直前に告白をして、春が来る前には
何でもなくなっていた。
だけど、何でもなくなった後も長く心に留まり続けた。
実を言うと、今でも顔を覚えている。
いつだったか、テストの答案用紙が返ってきて、
いつも誰にも見せないのに、見せてくれて驚いた。
触発されて、一時期勉強時間を増やしたことがある。
同じ高校に入りたかったから。
高校生になって、その子が学校でいじめに遭っていると
風の噂で聞いた。
信じられない気持ちだった。
部屋で、友達何人もと遊んでいても
時間になると、そっとラジカセのチューナーを合わせて
誰も気にも留めないうちに、外国の音楽を聴いていたのに。
あの時の微笑みを、見せてあげたらいいのに。
再会したのは、高校を卒業した後だった。
偶然の出来事。
北口から駅に入った時、
人の往来に紛れて、その姿を見つけた。
彼女は泣いていた。
こちらに向かって歩きながら、人目もはばからず。
泣き顔を見たのは、それが初めてだった。
思わず声を掛けようとして、何となく気付いた。
後ろに誰かいることに。
声や物音がしたわけじゃないけど、そうなんだということに。
そしてその時、もう一つ分かった。
この子のことが、本当に大好きだったと。
伝えられずに終わってしまった、その思いが。
頭が良くて気配りができて、
洋楽が好きな女の子。
まるでそよ風のように僕のすぐ横を、
彼女は通り過ぎていった。
すれ違うその瞬間を、見ないようにした。
歩くスピードを早めて、改札口へ向かった。
電車の時刻は25分後を示していたけど、
足が進むまま、階段を昇った。
振り返ってしまわないうちに。
人のまばらな10番ホーム。
特急列車が光の粒に変わっていく。
漂う空気はひんやりとしていて、
線路の向こうに、いつもの夜が街を染めていた。