目を開けたまま苦しそうに呼吸する親父

 

血圧は60

 

意識はない

 

母が

 

妹が

 

親父の親友が

 

病室が人で溢れそうになった

 

がんばれ!がんばれ!

 

しっかり!息して!ほら!

 

みんなが親父に声をかける

 

妹は泣き崩れている

 

母は目に涙を浮かべながら親父の頭を撫でる

 

最後まで親父は戦っていた

 

生きようと

 

最後まで苦しんで戦うことを選んだ

 

生きることを諦めず

 

2時間程たった頃

 

親父は旅立った

 

医者から死亡が宣告された

 

親父は

 

見たか?俺頑張っただろ?許してくれよな

 

誇らしげでやっとゆっくり寝れる

 

そんな顔だった

 

待合室に戻って茫然としている俺たちに親父の親友が言った

 

泣いてる暇なんてないよ

 

これからうんっとやる事あるんだよ

 

泣くのはそれが全部終わった後にしな

 

ありがたい言葉だった

 

親父の親友だからこそ

 

親父が言いたいことを変わりに言ってくれた

 

情けないことに俺達は家族に関係すること、生活、親戚付き合い。全てを親父に任せていた

 

誰もがこんなに早くこうなるとは思っていなかったから口座のお金も何もおろしていない

 

どうしよう

 

どうすればいい

 

そう

 

ここからは誰も助けてなんかくれない

 

むしろ助けてもらってはいけない

 

さあどうする

 

そう思っている矢先に看護師から遺体の引き取り先に連絡を頼まれる

 

猶予も何もない

 

悲しみながら帰る事すらも許されない

 

そう

 

悲しむのはまだ先の事

 

だから今は

 

親父に感謝して

 

今までありがとう

 

ありがとう

 

そう思いながらやることやろう

 

ただその前にもう一度

 

おやじ!

 

ありがとう

 

ありがとう