こんばんは。きくです。
今日もお読みいただき、ありがとうございます。
 
 
【気付くと月がいる。】

ある日、仕事が終わってビルの外に出て
少し歩きながら、気配のような何かを感じて
空を見上げると、そこに月がいた。
まだ明るい水色のような空に、白い月がいた。

またある日は、仕事が終わってビルを出て
しばらく歩くと、交差点で左からタクシーが来た。

タクシーは、私の行く手を塞ぐように一時停止した。
私の後ろから車が数台続いて通り過ぎていくので、
あと何台いるのかと思い振り向くと、
そこに月がいた。

ビルの間にそこだけスコンと抜けた、
暗くなり始めた紺色になりかけた空に、
明るく光る月がいた。

まるでポンっとカラダを軽く叩いて
呼び止められたかのように、
気付いて欲しくてピピッと送られた合図を
受け取ったかのように、月をみた。

探したわけでもないのに、
そこにパッと現れたのが嬉しくて、
月が愛おしいと思った。

月はしばらくの間、
部屋の南向きのベランダから
見ることができなかった。
今はベランダにしゃがんで上を向いたら、
見えるようになってきた。

長い間と思えるくらい、
あまり月を見ていなかったので、
雲ひとつない夜空に浮かんだ、
眩しくハッキリとした月が、
胸がときめくくらいにとても新鮮だった。

瞬いていた星たちが、私たちの再会を
一緒に喜んでいるようだった。