ロンドンの治安の悪化と響の怖い経験 | テムズ河の潮汐を眺めつつ

ロンドンの治安の悪化と響の怖い経験

日本のニュース番組を見ていたらロンドンで治安が悪化していると伝えていた。警察の予算が減らされている為に捜査する人手が足りず、犯罪被害額が50ポンド(約7千250円)以下の軽犯罪は放置されている。ひったくりや商店からの強盗が増えて一時悪名高かったニューヨークよりも危ないと。

 

私の職場には地域の警察からの発生した犯罪と対策のメールが定期的に送られて来ていた。それによると確かに中小企業を狙った空き巣が増加し、モーペットで歩道に乗り上げてカフェのテーブルから、または使用中の人の手からスマホを奪う事件が毎日のように起きていると記されていた。

 対策はスマホを屋外で使わない、仕方なく屋外で使う時は周囲をよく警戒する、飲食店の屋外席で手元だからと油断してテーブルの上に置いておかない。もし万が一狙われたら抵抗せずに渡す。相手は武装している場合もある、携帯電話は買い替えられても命は替えがきかない。

 

響の通う学校でも携帯電話を学校に持って来ていけない主な理由は『強盗のターゲットにならないように。』だった。『校内で高価な携帯電話の紛失や盗難があっても学校は責任持てません。』というのももちろんある。

 

こんな事を考えていた暖かい日曜日の午後にいきなり事件は身近に起こった。近所の公園に同級生のお友達と遊びに行っていた響が駆け込んで来てアワアワ言っている。響は叱られた時や本人が怒っている時にわざとアワアワ言って私達を困惑させるが、今回はどうやら本当にパニック状態でわざとではない。

 

要領を得ないので質問作戦。

 

私: 気がついたら自転車が盗まれてた?

響: ノー。

私: 財布無くした?

響: ノー。

私: お友達とけんかした?

響: ノー。

 

ようやく落ち着いて話せるようになった響によると、公園を同級生(12才、日本なら小学6年生)のAくんと歩いていたら不審な男3人に気が付いた。1人は18才位、残りの2人はまだ15、6才で髪の毛が全く見えない程深くフードを被っていた。彼らは顔にマスクをつけてから響とAくんを追いかけ始めた。

 慌ててAくんと2人で逃げ出したが途中分かれ道でバラバラになってしまい、響1人だけで追いかけられていたら母子の家族連れに行きあった。すると男3人は引き返して今度はAくんを追いかけに行ってしまった。それから家までずっと走って帰って来た。Aくんが心配だと。

 

Aくんは携帯電話を持っているけれど丁度電池切れしたところだと言う。Aくんのお母さんに即電話するもまだ家に戻っていないそう。透が公園に自分で見に行こうとしたけれど、男の子が1人不審者3人に追いかけられて所在不明なんだからまずは110番(イギリスは999)に電話して貰った。

 

電話で警察に家とAくんの家の詳細と事件のあらましとを説明している間に、Aくんのお母さんから留守電が入っていた。Aくんのお母さんが公園に駆けつけたら、Aくんは無事に母子のグループに保護されていた。Aくんも追いかけられている時にこのグループに行きあい、犯人達は諦めて去って行ったそう。

 その後も母子のグループは怖かったら側にいなさいと言ってくれたので、一緒に園内を歩き回って響の事を探してくれていたそう。親切な人達、この位の公共心を持つ人々が周りにいてくれる世の中はまだ信頼できる。そして怖かっただろう現場に残るなんて、なんと友達思いのAくん!

 

手ぶらで無料の市民公園で遊んでいる12才が大金を持っている訳もなし、男3人の狙いはスマホか単なる嫌がらせか。響が一緒に登下校する近所の同級生も最近同じ公園でスマホを奪われたそう。知らなかった。早く言え。ま、それでも遊びに行かせてたとは思う。日曜日の午後3時、4時の話だ。

 

警察はAくんの家に行って事情聴取はしたが、怪我や物的被害もないので捜査はしないのだろう。我が家に響に会いにも来なかったし。ただ通報してこういう1件があったと記録しておいて貰う事には意義があると思う。不審者3人が武器を持つなど激化する前に捕まって矯正されて欲しい。

 

深くフードを被りマスクをつけて顔を隠した男達に追いかけられるとは相当な恐怖体験だ。でも響は意外と打たれ強い。Aくんが事情聴取を受けている間は1人でipadでゲームをして待ち、Aくんから電話がかかって来ると『明日、学校で話のタネになる!』と盛り上がっていた。

 その前にX-boxで噂はあっという間に広がったよう。響とAくんがグループ・プレイ・モード(?)に入ると小学校時代の同級生とかいつもの面々が声で登場してワーワー話しているのが隣の部屋まで聞こえた。起きた事を人に話すのは心の負担を軽くするよね。