他山の石 | テムズ河の潮汐を眺めつつ

他山の石

テムズ河出版の一斉メールにはたまに仕事を探している編集者、デザイナー、イラストレーターからのSpeculative Letterが来ます。Speculative Letterとは特に人材を公に募集していない会社に「私はこんな仕事が出来ますが、ひょっとして関連する職に空きはありませんか?」と訊ねる手紙です。
 一斉メールに来た手紙に普通に返信するとそれもやはり一斉に全社員の所に配られるので採用には関わらない私にもどのメールが放置されてどのメールが反応を得るのかが分かります。最近もうすぐ卒業予定の編集職志望の学生さんからのSpeculative Letterが来ました。

一読してどうも文章が不自然で幼くてしかも強引な感じだったので添付されていたワードで作成された履歴書も開けて読んでみる気にはなりませんでした。これでは何百社に送っても職を得る事はもちろん返信の1つさえ貰うのも難しいのではと思いました。
 その後向かいの席のプロダクション部の沙弥子さんが隣の絵奈さんに向って「さっき来たSpeculative Letter読んだ?編集者志望と書いてあって『私は細部にも目が届き・・・』と言う割にはざっと読んだだけで3箇所も綴り間違いしているのよ。」と呆れていました。
 さすが元編集者の沙弥子さん。私も1箇所は「あれ、手紙の送り主は英語専攻で編集職志望なのに文法間違いが。」と思った箇所がありましたがそれは単なる綴り違いだったようです。試しに本文をコピーしてワードにペーストしてみたら綴り違いの場所に赤の下線が付きました。
 私が他に気になったのは自己紹介と編集の仕事に対する熱意を表明してあるのは良いのですが締めくくりが「ぜひ面接の機会を与えて頂けませんか。」ではなくていきなり「どうぞ私を正社員として採用してください。」だった事です。

このメールの送り主は恐らく社会人として1度働いてから改めて大学に通ったMature Studentでは無くて普通の21、2才の新卒の人だろうから文調が幼いのも仕方ないです。私も最初の仕事を探すのには苦労したので必死な気持ちも分かります。
 でも自分の書いた文章をワードなどのソフトでスペルチェックしたり、それを大学の就職課の人や社会経験のある知り合いに読んで貰って意見を聞くという一手間を取っていたらこういう冷たい反応は受けないで済んだだろうになと思います。

特にネイティブではない人だったらSpeculative LetterもCover Letter(履歴書に添える手紙。Speculative LetterはこのCover Letterの一種。)もCurriculum Vitae(C.V.と略して呼ばれる事が殆どで、履歴書の事。)も上記の一手間をかける事は必須だと思います。
 私が去年の始めに転職する時に使った履歴書はまずスペルチェッカーで綴りを直したのはもちろん、前の会社の社長さん、夫、お友達のお母様で大学の教授として普段から学生の就職指導をしている人のネイティブ3人に読んで貰って修正を重ねました。
そして私はタイポグラフィー専攻でデザイナー志望だったので見た目にも凝りました。と言っても写真やイラスト入れた訳ではなくて文章のデザインだけで勝負!編集者志望で綴りが間違っていたり、デザイナー志望なのに平凡なレイアウトだったら説得力が無いですよね。

以下が送られて来たメールのコピーです。名前が外国風だしひょっとしたら外国人留学生なのかも知れません。英語力については私は全く人の事を言える立場には無いのですが、私は英語専攻の編集者志望ではなかったので救われています。

Dear Sir/Madam,

I recently graduated with a 2:1 BA English degree and have been working in several publishing houses every since to gain experience. I have loved being a part of the publishing industry and know that this is my career and what I strongly want to enter. I have a good eye for detail, I am a very friendly person and I use my inititive. I have had 2 years of administration experience when I worked in my Students' Union in the Support Centre Office. I am eager to learn, I cook a wonderful XXXXX (とあるエスニック料理), and I would love to join your company. I have attached my C.V so please do accept me for a position.

Thank you,

XXXXX XXXXX (上記のエスニック料理にマッチする外国風の名前)

沙弥子さんの言っていた綴り間違いは一行目のeveryはeverで、三行目のinititiveはinitiativeで、最後の行のC.VはC.V.であるべき所でしょうか。他にも明らかに文法的に間違っているという訳ではないけれど何だか違和感を感じる文章です。