ビートルズの公式作品は全て聴いてきたが、有名ではないもののかなり通好みのいい曲がある。
今回はそれらを少し取り上げてみることとする。
・Happiness Is A Warm Gun
通称ホワイト・アルバムに収録されているジョンの作品。
ジョンの死を考えると何とも複雑な思いを抱いてしまうタイトルだが、ジョンはテレビCMか何かでこの
タイトルのフレーズが使われているを見てインスパイアされたとのこと。
内容はドラッグ体験が暗喩的に語られているもの。めまぐるしく変わる曲展開はハマれば中毒性がある。
この曲は何と言ってもジョンのボーカルが最高。
イントロは語りかけるように静かに、そして曲の展開と共に徐々に熱を帯びてくる。
「I need a fix 'cause I'm going down~」の部分ではまさに底を這いずるような低音ボーカル。
そしてサビでは狂気をはらんだような絶叫。これがジョン流のブルースだ。
クライマックスでは、恐らくジョンが生涯残したすべての音源で一番のハイトーンを出している。
ただ単なるこれ見よがしなハイトーンではなく、魂の底から全てをさらけ出すような叫びを伴った肉声。
これはジョンのベスト・ボーカル・パフォーマンスである。
・Taxman
アルバム『Revolver』収録。
ジョージの曲が初めてかつ唯一、アルバムのオープニングを飾った記念すべき曲。
ジョージらしい皮肉を交えた歌詞、そしてハードロックの要素もはらんだギターのリフとサウンド。
ポールがまたいいベースを弾いている。
諸説によると、ジョージの曲になるとポールは自分が上の立場だと主張したいからなのか、
いつもより良いプレーになっているという。
真偽のほどはわからないが、この曲のベースは専門誌でも良く取り上げられるほどカッコいい。
また、この曲のギターソロはポールが弾いている。
やはりポールはジョージに対して意地悪なのだろうか?
しかし攻撃的なこのソロは、ジョージの優しいギターでは表現できなかったかもしれない。
そう思わせるだけの素晴らしい出来である。
・Mother Nature's Sun
ポールの曲は、実在しない人物を凝った名前をつけてストーリー仕立てにすることが多いのであるが、
それらの曲は私にはあまりピンと来ない。例えばOb-La-Di,Ob-La-DaにはDesmondとMaryという夫婦を
出演させてみたり、Meter Maidという職名の語呂に合わせてLovely Ritaという女性を創造したり・・・。
ポール自身は歌詞に登場する人物の名前には相当こだわっているようだが、はっきり言って私には
どうでもいい。
しかしそうではないポールの曲には、出色の出来のものが多い。
Yesterdayは別格であるが、この曲も捨てたものではない。
ホワイトアルバムに収録されており、ポールが他のメンバーと共にインドで瞑想修行していた際に
書かれたものである。
日々の喧騒から離れ穏やかな瞑想の日々を送っていたせいか、ポールはただの音楽好きな大地の子
(Mother Nature's Sun)に自分をなぞらえている。
聴いていると少年のような表情をしたポールが屈託無い笑顔でギターを弾いている様子が浮かんでくる。
余談であるが、ジョージはこの瞑想修行の際にメンバーが作曲をするのを「修行を真面目にしていない」
と怒ったそうだ。いかに彼が真剣に取り組んでいたかがわかるエピソードである。
・I'm Down
ポールの魅力の一つに、ロックンローラーとしての一面がある。
特にリトル・リチャード風の曲を歌わせれば右に出るものはいない。
この曲はオリジナル曲ではあるが、そのファンキーなボーカルを前面にフューチャーしている。
ジョンの電子オルガンもかなりイケている。
65年の世界初のスタジアムコンサートであるニューヨーク・シェイ・スタジアム公演のエンディングでは
興奮したジョンが肘で鍵盤を弾き、それを見たポールも喜んで一回転、ジョンは終盤自分のプレーで
オルガンが落ちそうになっている様をジョージを小突いて見させようとしている。
66年の日本武道館公演でもこの曲はエンディングであったが、ジョンはセッティングされていた電子
オルガンを弾かなかった。
たった1年で急速にコンサートへの興味を失ったビートルズの姿を象徴的に表している。
・You Can't Do That
アルバム『A Hard Day's Night』収録のジョンの曲。
このアルバムは初めて全曲Lennon=McCartneyオリジナル作品で固めた初期ビートルズの傑作である。
中でもジョンの才能が一気に開花しており、リーダーとして名実共に君臨している。
アルバム収録曲では「If I Fell」というバラードも秀逸なのだが、この曲はジョンのロックンローラーとして
の力量を存分に見せつけている。
イントロのリフからして、ジョン独特のリズムが感じられる。エリック・クラプトンはjジョンのギターを高く
評価しているが、それはその骨も肉も断つ様なエッジの効いたカッティングにある。
この曲ではギターソロもジョンが弾いているのだが、そのカッティングを交えたフレーズはジョージにも
ポールにも弾けない何かがある。
歌詞もこの頃のジョンを象徴するようなマッチョな男っぷりを誇示するような内容で、解散後Imagineを
書いた同じ人物とは思えない。
こうした二面性こそ、ジョンの魅力だと思うのだ。
・Good Night
ホワイト・アルバムの最後に収録された歌。ボーカルはリンゴだが、作曲はジョンである。
ジョンはこの曲を書いた時、決して自分が歌おうとは思わなかっただろう。
なぜならその頃はビートルズのリーダーとしてのプライドがまだあり、マッチョなイメージを崩したく
なかったからである(実質上はポールがリーダーシップを取っていたのではあるが)。
しかしその実、既にヨーコの影響を受けていたからか、その優しい内面からにじみ出るようにして出来た
のがこの曲である。
Now It's Time to Say Good Night Good Night Sleep Tight
Close Your Eyes and I'll Close Mine Good Night Sleep Tight
歌詞を見てわかるように、これは最初の妻シンシアとの間に産まれたジュリアンへの子守歌として
書かれたものである。
後にジョンはヨーコとの間に産まれたショーンに対しても子守歌を書いている。(Beatutiful Boy )
この曲ではうって変わって、ジョンは自分の声で素直にわが子への愛情を心を込めて歌っている。
ビートルズのジョンから、ただのジョンへ。
ジョンの心の底はいつも変わらぬままだった。
ただ、ビートルという重く厚い「よろいかぶと」を脱ぎ捨てるのにそれだけの時間と経験を要したのである。
ジョンという人間に感じる魅力は、いくらカッコつけても見え隠れするその優しさにある。
それは老若男女や国籍・年代を問わず、今でも多くの人々を惹きつけてやまないのである。