そう彼はいつも定位置に座っていた。自分が行く時間帯が微妙にズレているのにも拘らずその白髪の白人(おそらく60歳ぐらい)はいつもそこにいた。どこか普通でなく目が死んでいる様な感じをしていたのと、態度がおかしいのが気になっていた。この感じ前にも見た事あったからだった。

そうあの人だ。

昔の会社の上司ともいえる人だが、他のセクションにいた人なので自分はよく知らなかった、同僚の話によればしばらくの間会社を休んでいて復帰したとだけ聞かされ何事も無いように接していたが、ほどなくその理由はが分かった。

アル中だった。

その人はジャケットの胸ポケットにボトルを入れていたのをある時見てしまい、よくチューインガムで噛んでいてニオイを消そうと努力していた事も後でその理由も知る事になった。

そう、その白人も紙袋に包まれたボドルも持っている。あれは間違えなくアルコールだ。

その彼と前の職場の2人には共通点がある。

①アルコールの瓶を表に出さず隠している。それもアルコールのボトルではなく別の空き瓶でラベルがない。
②自分ではしっかりしていると思っているかもしれないが....若干注意が散漫になる事がある。その白人の人も荷物を置いたままトイレに行ってしまったりしていた(それも貴重品をテーブルの上に置いたまま)その上司も仕事の途中に突然消えたかと思うと何事も無く戻って来て.....そんな感じとよく似ている。

聞いた所によれば、アル中の人はお酒飲んではいけないと自分で分かっているらしく、それでも止められないためお酒の瓶ではないようにしているのは自分へのせめてもの抵抗と言い訳だと聞いた。

もちろんそうなってしまった理由ははっきり分からない。ストレスなのかもしれないしプライベートで何かあってそれを忘れるためにお酒を飲んでいるのかもしれない。どちらにしても見て見ぬ振り出来なくなっていた。(自分もタイで長く住んでいたら将来は彼のようになっているような気がしたからだ)

そこで今日こそは声を掛けようとしたある日、いつもいるべきその彼はいなくなっていた。それから何度もその場所に通ったが彼はそれ以後ぱったりと見なくなった。

彼は自分の国に帰っただろうか?そうだとしたら自分はほっとしただろう。病気になった時は自分の国に帰るのが一番だ。その年齢になった時すでに身内はいないのかもしれないが、いつも1人でいたようなので、タイにいても身近な人はいないと思う。

時々そんな人を見て自分の未来に重なる時がある。不思議な感覚だがだれかが自分へ教えてくれているような錯覚に陥る。

落ちた白人、彼の過去を少し知りたくなっていた。そんな人たちをみるとつい黙っていられないお節介な自分がいる。もちろん後で傷つくのは自分だったりもする。でもそれでもいいと思う。傷つくの自分なら別に問題はないだろう。

タイの冷たさは今日もいつもと変わらないままだった。

今日より、明日だよね?
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