有望なカンボジア農業(2) | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

(昨日の続き)

(4)取得可能な農業・林業用地、ただし将来は不可能(?)

 カンボジアの農地耕作、植林事業推進の特権(Economic Land Concession, ELC=経済的土地コンセッション)は農林漁業省が付与しています。近年では中国、韓国、ベトナム企業などによる積極的なELC取得が目立っています。特に、最近では中国やベトナムの企業による10万ヘクタール規模でのゴム農園用地確保などが急増しています。こうした、政府による経済的土地コンセッションの付与があるのはカンボジア以外ではラオスだけで、近隣のタイやベトナムにはありません。

 最長99年のリース権とコンセッション権(土地整地・耕作・植林の権利)は登記可能で、借入の担保として金融機関へ差し入れることも転売することも可能です。カンボジア政府にとってはELC(経済的土地コンセッション)を与えることは、高度な技術と多額の初期資本投下が必要な集中的な農・林業活動を海外投資家に開発してもらうわけで、農村地区における雇用増加と、土地使用料、税金その他の関連サービス料を通じて政府、州、村落の収入を創出することにつながります。

 ところが最近では、企業が全く開発を行わない場合や、雇用を全く生み出さない場合などには、コンセッションの取り消しも行われるようになってきました。2008年11月末時点で、65の私企業に対して912,275ヘクタール(約95.51平方キロ)の農業・林業用地がELCコンセッションとして認可されていますが、その多くは土地を得て、ただ樹木を伐採するだけとの批判もあり、ほとんど雇用を生み出していないことから、新規コンセッションの付与、特に外国からの投資に対してコンセッションを認可することを止め、取得済み企業に対しては、土地の開発を強制して従わない場合には権利の没収に踏み切ることを求める意見も多くなってきたようです。

 2012年からは、カンボジア領海(タイ湾)の海底油田で石油生産が始まります。海底油田によって将来的には2009年度の国家予算約17億ドルに匹敵する石油収入が発生することもあって、カンボジア政府としても、ELCコンセッションを付与して付随収入を期待する必要性が薄らいでくるものと思われます。

 中国、韓国、タイ、ベトナム、カタール、クウェートなどが大々的に土地を囲い込んでいることや、今年2月には、オーストラリア前財務大臣、ピーター・コステロ氏が6億米ドルの巨大な農業ファンドを立ち上げ、カンボジアの最低10万ヘクタール(約31.6平方キロ)の農地で、チーク材、パームオイル、サトウキビ、コメ、バナナなどを栽培し、15万人の雇用を生み出すと発表しています。

 $ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ-cambodiafarming01

 ところが、日本はカンボジアのODA最大援助国でありながら、FDI(海外直接投資)はほとんどないのが現状です。日本には戦略的な食糧確保計画が全く存在していないのが厳しい現実のようです。日本人は日本に固執してビルの中でトマトなどを栽培している場合ではないと私は思います。いかが思われますか?

(付記)
 今回のカンボジアの資料は宮内敬司氏(元マルハンジャパン銀行頭取)から提供していただきました。宮内氏は北海道拓殖銀行出身でスキーの名手。寒い北海道から暑いカンボジアにきて世の中の動きに適応(adopt)していらっしゃいます。同氏は、「これからの日本の若い世代は海外にでていくべき」と強調しておられました。

 こういう時代が来るのは、数十年前から判っていたはず。しかし、例えば、現実には英語のできる日本人の若者は少ないです。日本の英語教師はいままで何をやっていたのでしょうか。安定した給与と年金、そして長い休暇、または最終的には国から葬式費用まで捻出してもらっている教師は結果的には英語のできる日本人の若者をほとんど作り出していません。例えば、文部省はTOIECで少なくとも860スコア以下の(スコアの)英語教師には辞任(英語教師補助に回るとか)していただくとか、日本の将来のために厳しい市場原理を導入してみるのはどうでしょうか。外務省もカンボジアにお金をばら撒くのを仕事にするのではなくて、民間資金をカンボジアに導入することを仕事にしてもらいたいものです。