ベトナムで電力不足 | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

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ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

 「暑期」の電力需要増大メコン川水系の「旱魃」でベトナムでは「電力危機」が叫ばれています。

 3月初旬、ベトナム電力グループ(EVN)はメコン川水系の「旱魃」対策のために水田やプランテーションへ水を供給する必要から水力発電所の電力生産を低下させると発表しました。EVNでは同時に、電力供給が危機的状況にあるとの警告を発していました。

 3月からベトナムは暑期に入り、気温が高くなります。したがって、クーラーなど家庭用電力需要が増加します。EVNでは3月の電力需要を2月の15-17%増に当たる一時間当たり260-265kwhと推計しています。また、産業用電力需要も景気の回復で増加が予想されています。年初から2月末までの2ヶ月間の鉱工業生産は、前年同期比13.6%の増加となっています。内訳をみると、エアコン(85.7%増)、紙(57.0%)、冷蔵庫(49.6%増)、バイク(35.9%)、綿製品(31.8%)と景気の回復の足は早いことが伺えます。地元紙は、3月に入って更に生産が加速していると報道しています。

 更に、同時にチベット高原東部を源とする東南アジア第1の大河・メコン川の水位が異常な低下を見せていることも影響しています。メコン水系では1993年以来の「旱魃」の状況です。「旱魃」のために、(農作物への水不足から)ダムから水を放流して農地に水を供給するため、メコン水系にある水力発電所は電力生産を低下させています。

 加えて、EVNによると、年初に稼動開始した北部ベトナムのタインホア省・Cua Dat水力発電所はまだ本格的に稼動しておらず、他の火力発電所建設も計画より遅れていることが電力不足に拍車をかけているといいます。

 ベトナムでは電力需要が年10%ペースで増大しています。ホアン・アイン・ザー・ライ(HAG)などが主に国境近くのカンボジアやラオスの水力発電所に多大な投資をしているのはこのためです。今後は、原子力発電に加え、コスト面の問題さえ解決すれば風力発電、太陽光発電などの脱石油エネルギーも注目を浴びるでしょう。